■2005.4月号 vol.19 子どもの事故(交通事故を中心に)

 今回は交通事故について考えてみましょう。低年齢では車の中、高年齢では車外での事故の割合が多くなります。子供を抱っこして乗っているお母さんを見ますが、衝突の際にはどのくらいの力がかかるのか御存知ですか。10Kgの子供を抱っこして50Kmの速度で衝突すると、その腕には300Kgの力がかかります。どんなに力があっても支えることは不可能です。衝突によって投げ出され、フロントガラスにぶつかってしまいます。小さい子供には、シートベルトは役に立ちません。最も安全なのが、チャイルドシートとなのです。平成12年に6歳未満の子どもにチャイルドシートの装着が義務化され、装着率は少しづつ高くなってきています。しかし、平成16年のチャイルドシートの装着率は47.4%で未だに充分とは言えません。(JAF調べ)もちろん、先進国では最も低い装着率になっています。事故は起こして初めて、その恐さが分るのです。私に限っては通用しません。年齢に合う大きさのものを用い、後部座席にしっかりと装着するようにしましょう。

 年齢が上がると車のまわりでの事故の割合が増えてきます。発進やバックにより、引かれたなどの報道も目にします。車のまわりで遊ばせないことはもちろん、運転する際、発進の前に車の前後をよく確認する習慣を付けましょう。飛び出しも事故の大きな原因の一つです。これには子供の特性が関係していると考えられています。予測できない行動や一つのことに集中するあまり、物の後を追って飛び出すことも事故の原因となります。ボールが出てきたら子供が出てくると思え!というのもそんなことを表しています。また子供は目の位置が低くて視野が狭く、速度感や距離感が劣っているための事故が多いとされ、視機能が完成するのは10歳以上と考えられています。防止のためには目を離さないのは当然ですが、運転者も子供の特性を理解し、注意を向けることが必要です。交通事故も防止可能です。子供の立場に立った、安全対策を考えてあげましょう。

 その他の事故で頻度の多いものには、溺水があります。年齢的な特徴があり、乳幼児では家の中、幼児から学童期では屋外が多くなります。家の中ではお風呂が最も多く、たった10cmの深さでも溺れることがあるのです。事故防止のためには、風呂場に一人で出入りさせないことが重要です。事故防止のためには扉をきちんと閉め、鍵を付けるようにしたいものです。残り湯をしないことや風呂の蓋を固いものに変えることも事故を少なくする方法です。洗髪中に溺ることもあるので、一緒に入っても目を離さないことが必要です。信じられないことですが、バケツで溺れるということもあります。外で泳ぐときには大人が付き添うことはもちろんですが、川や池などに近づかないような躾けも大切です。

 転落も多い事故の一つです。初めて寝返りをしてベッドから落ちた、お風呂の後着替えていたら洗濯機の上から落ちたなどのことも聞きます。目を離さないということはもちろんですが、ベッドの柵を下ろしたまま離れない、階段やベランダに行けないような工夫をする、ベビーカーに一人で乗せたままにしないなど、数え上げればきりがありません。外に出るときには大人が付き添うことが原則です。大きくなって外に一人で出るようになったら、危険な場所に近づかないような躾けが大切になります。

 やけどにも気をつけなければいけません。お湯などをこぼしてやけどすることが多いのです。身の回りに熱いものを置かない、目を離さないなどの注意が必要です。炊飯器やアイロンなどの電気製品でやけどをすることもあるので、置き場所などには十分注意しましょう。

 事故は大人の責任で防止できるものです。乳児では特に予防が必要で、すべて親の責任です。この機会に事故防止のための躾けに付いて考え、もう一度身の回りの安全点検をしておきましょう。



2005.5月号 vol.20 紫外線は怖い
2005.4月号 vol.19 子どもの事故(交通事故を中心に)
2005.2-3月号 vol.18 子どもの事故(窒息を中心に)
2005.1月号 vol.17 冬の風邪について

2004.12月号 vol.16 アトピー性皮膚炎 その二
2004.11月号 vol.15 アトピー性皮膚炎 その一
2004.9-10月号 vol.14 じんましんについて
2004.8月号 vol.13 扁桃腺炎について/扁桃肥大について
2004.7月号 vol.12 流行性耳下腺炎について/溶連菌感染症について
2004.6月号 vol.11 風疹について/水痘について
2004.5月号 vol.10 薬について
2004.4月号 vol.9 ひきつけについて
2004.2-3月号 vol.8 喘息について
2004.1月号 vol.7 咳について

2003.12月号 vol.6 インフルエンザを考える
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2003.9-10月号 vol.4 麻疹(はしか)について
2003.8月号 vol.3 熱中症について
2003.7月号 vol.2 夏カゼ/夏に多い皮膚の病気
2003.6月号 vol.1 食中毒・0-157