■2005.1月号 vol.17 冬の風邪について

 どうして冬になると、カゼをひきやすくなるのでしょうか。ただ寒いということだけでは、説明がでません。寒いことだけが原因であれば、緯度が高い所では患者さんが多くなるはずです。どうも、そうではなさそうです。カゼの原因のほとんどは、ウイルスということは御存知だと思います。流行に大きく関係するのは、まず第一にウイルスの種類によります。冬の代表のインフルエンザを例に挙げると、気温が下がり湿度が低くなる頃に暴れだします。この環境の変化が、ウイルスの生存に大きく関係します。夏カゼも、季節は違っても同じと考えていいでしょう。しかし、ウイルスが増えたからといって、全員が感染するものでもありません。別な意味でウイルス感染に関係するものが免疫です。水痘に一度罹患すれば、二度とかからない終生免疫を持つことがわかりやすい例です。ウイルス感染が全て終生免疫ではなく、種類によっては何度も感染を起こすことがあります。もう一つ、局所的(のどなど)な防御(免疫)力も関係しているのです。通常であればウイルスがのどについても排除出来ますが、局所の防御力が低下すると排除出来ず細胞内に入り込まれてしまうのです。細胞内で増殖したウイルスが全身に広がり、症状を引き起こすのです。この防御力は暖房で空気が乾燥した部屋に長時間居たり、たばこの吸いすぎ、過労や睡眠不足などによって低下するのです。他にも寒冷、栄養、ビタミン不足も関係していると考えられています。もちろん、単に疲れたからといってカゼをひくわけでは無いことも、同時に知っておいてください。

 治療はあくまでも対症療法になります。カゼ薬と呼ばれるものは、それぞれの症状を軽減するために用いられるものです。ウイルスの種類によって、感染した時から症状や経過は決まってしまっているのです。薬を飲むと症状が軽くなり治ったような気がしても、薬にはカゼの経過を変える効果はありません。ですから早めに薬を飲んでも重くならないというのは、単なる誤解から生まれたものです。治療法はない以上、予防することが大切になるわけです。昔からカゼを予防するためには、十分な睡眠をとり、バランスのよい食事を摂ることが大切と言われていますが、全くその通りです。このようなことは、局所的な防御力だけでなく、全身的な免役を高めることにも役立っているのです。

 カゼの時の生活について考えてみましょう。熱がある時には入浴させないことは日本では一般的な常識です。お風呂の湯温は通常41℃前後です。38℃の子どもをお風呂に入れて体温を上げる必要は無いわけです。また余計に体力を消耗することや、水分を取れずに汗をかきすぎると脱水症になることも注意して下さい。次に外出についてはどうでしょう。具合が悪く部屋に閉じこもっていると、子どもは欲求不満に陥ってしまいます。大人と違い病気を理解できないばかりでなく、安静にしている意味もわかりません。また、視野の関係から大人が狭い部屋に閉じこもっているのと同じように感じてしまいます。ですから熱があっても外に出たがりわがままを言ったりするのです。しかし、当然熱がある場合には外出は避けなければなりません。

 生活を戻す基準は、どうでしょう。子どもは夜熱が出て朝に下がっても、再び夜に出ることは珍しくはありません。そう考えると解熱後24時間は待つ必要があります。嘔吐や下痢が多い、咳や呼吸が苦しいなど症状がひどい場合には、もちろん避けて下さい。多少症状が残っていても機嫌が戻り元気が出てくれば、そろそろ考えてもいいでしょう。回復期であれば、食欲が無くとも水分が十分に取れていれば構わないでしょう。

 幼稚園への登園はどうでしょうか。園生活の頃は、まずしつけを大切にしたい時期です。病気の時には本人のためにも周囲のためにも、休む必要があることを教えなければなりません。楽しいことだけを優先するのでないことを、子どもにも覚えてもらう必要があります。学校では、義務教育の意味からも熱が下がれば行かせてもいいでしょう。保育園の場合は親御さんの仕事との兼ね合いを考えながら、子どもに悪影響を及ぼさない妥協点を見つけることも止むを得ないことでしょう。

 子育ての場面ではいつもメリット・デメリットを考えて、子どもにとって良い方法を選択してあげることが大切です。



2005.5月号 vol.20 紫外線は怖い
2005.4月号 vol.19 子どもの事故(交通事故を中心に)
2005.2-3月号 vol.18 子どもの事故(窒息を中心に)
2005.1月号 vol.17 冬の風邪について

2004.12月号 vol.16 アトピー性皮膚炎 その二
2004.11月号 vol.15 アトピー性皮膚炎 その一
2004.9-10月号 vol.14 じんましんについて
2004.8月号 vol.13 扁桃腺炎について/扁桃肥大について
2004.7月号 vol.12 流行性耳下腺炎について/溶連菌感染症について
2004.6月号 vol.11 風疹について/水痘について
2004.5月号 vol.10 薬について
2004.4月号 vol.9 ひきつけについて
2004.2-3月号 vol.8 喘息について
2004.1月号 vol.7 咳について

2003.12月号 vol.6 インフルエンザを考える
2003.11月号 vol.5 発熱について/解熱剤について
2003.9-10月号 vol.4 麻疹(はしか)について
2003.8月号 vol.3 熱中症について
2003.7月号 vol.2 夏カゼ/夏に多い皮膚の病気
2003.6月号 vol.1 食中毒・0-157