■2004.12月号 vol.16 アトピー性皮膚炎 その二
 今回は治療法について考えてみましょう。アトピー性皮膚炎(アトピー)は皮膚の病気ですから、基本的には軟膏療法が中心となります。しかし、皮膚のバリア機能の低下も関係するので、スキンケアも大切になります。清潔を心がけ(ごしごし洗うのは感心しません)、保湿剤で皮膚のバリアを整えてあげれば、軽い場合にはそれだけで症状が改善することもあります。

 軟膏の種類は、非ステロイド系消炎剤、ステロイド剤などが使われています。現在の所、有効性と安全性が科学的に立証されている治療法はステロイド剤ですが、皮膚の表面の炎症を押さえるだけなので対症療法となります。非ステロイド系消炎剤は継続使用により悪化を招くことがあります。最近、小児でも免疫抑制剤の軟膏の使用が許可され、効果を上げています。治療の目的は治すということよりも、第一に子どもの苦痛を取ってあげることと考えて下さい。

 多くのアトピーは軟膏のみの治療で、かなりの効果が期待できます。生活に支障がでる痒みやジクジクする場合が軟膏治療の開始基準です。ステロイド剤の副作用が問題視されることもありますが、苦痛を考えれば使わざるを得ません。子どもの体が掻き傷だらけでも、ステロイド剤が怖いと拒否する方もいます。果たして正しいのでしょうか。大人でも眠れないほど痒ければ、翌日は大変です。そんな毎日の繰り返しでは、子どもの発達や発育に影響を及ぼすかもしれません。自分がアトピーであれば子どもの辛さもわかりますが、他人(自分以外)の辛さはわからないものです。全ての病気でも同じことが言えますが、子どもの辛さを思いやってあげることが大切です。ステロイド剤は強さ、範囲、使い方さえ守れば、十分な効果があり、副作用も怖いものではありません。かかりつけの先生の考え方や説明をよく理解して、軟膏の種類や塗る場所・回数など、指示を守って使いましょう。「お母さんのお化粧と同じように念入りに」と説明される皮膚科の先生もいるくらいです。

 さて軟膏療法でコントロール出来ない場合には、内服薬が必要になることもあります。内服薬としては、痒み止めと抗アレルギー剤があります。特に抗アレルギー剤の場合は一時的に使うことより、長期に渡って使われます。時に体質改善の薬と処方されることがありますが、アレルギーの反応を抑える薬であって体質を変えるものではないことを知っておいて下さい。

 それでもコントロールできない場合には、食事療法が考慮されます。医師によって考え方は多少異なりますが、多くはこの順序と考えて下さい。単品のアレルギーの場合には、除去することはあまり問題ありません。かわりに別なもので、栄養を補えるからです。しかし、多種類のアレルギーの場合には、発育や発達も同時に考えなければなりません。皮膚がきれいになることと栄養とでは、どちらが大切か言うまでもありません。目の前のことしか見えない親御さん達には、皮膚の赤さや痒さが大きく見えてしまうのです。外来でお母さん達に「皮膚と脳のどちらが大切?」と聞くと、迷わず「脳」と答えるのです。今が大切なことはよくわかりますが、将来を見据えた治療はもっと大切なことかもしれません。悲しいことですが極端な除去食のため、栄養失調や脚気で入院したという話も伝わってきます。食事療法はしっかりした指導の元で行い、客観的な立場で必要性を判断することが大切です。


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