■2004.5月号 vol.10 薬について |
今回は、薬についての話題を幾つか取り上げてみましょう。 最も多いのは、飲めないという相談です。子供に薬を飲ませることの難しさは、誰でも経験することです。特に2〜3歳位は難しいようです。この年齢では、味覚が発達し味がわかるようになって好き嫌いがでてきます。今まで美味しいと飲めていた薬が、突然飲まなくなることもあります。もう一つ厄介なことは、子どもは薬の必要性も理解できません。ですから目の前の味だけで、飲まなくなってしまうのです。薬の剤形をシロップから粉薬に変えるといい場合がありますが、必ずしも上手くいくとは限りません。飲めない場合は、何に混ぜてもいいと考えてください。でも一つだけ注意を。何かに混ぜて工夫したつもりでも、お母さんの顔に「薬」と書いてあることを感じているかもしれません。くれぐれも、気付かれないように。飲むことを優先するため何にでも混ぜて構いませんが、念のため病院や薬局で確認だけは忘れずに。どうしても飲めない時は、かかりつけの先生にアドバイスを頂くことも必要でしょう。 もう一つ、“もっと長くもらえませんか”と聞かれることがよくあります。お母さんも忙しいし、待ち時間や他の病気をもらう心配は、よくわかります。しかし子どもの病気は、急性で症状の変化が早いのが特長です。処方した薬は必ず効くとは限らず、服用しても症状の悪化や他の症状がでることもしばしばです。症状の変化に対応する処方が必要なので、多くの先生たちは薬の処方を2〜3日分としています。実際、薬を飲ませているとつい安心してしまい、症状が変わらなくてもそのまま様子を見がちです。たまたま希望を聞いて薬を処方し、次の診察時に症状が良くならず、長く出したことを後悔することもしばしばです。そんな時、苦しむのは子供です。子どものためを考え、むやみに長く薬をもらうことは避けてください。 「残っていた薬を服用していた」ということも、ときどき聞きます。薬は同じように見えても、症状や状態によって内容が変わります。長期の保存によって効果が落ちるものもあります。解熱剤などの常備薬以外では、以前に処方された薬は使わないのが原則です。 以前、こんなことがありました。咳が止らないとの訴えを聞いてみると、熱のために食事が取れないため、薬を飲ませなかったというのです。確かに、食後などと指示の場合、食事を取らなければ飲ませてはいけないと思うのも当然かもしれません。しかし薬を飲まなければ病気は良くならず、もっと症状が悪化してしまいます。食事をとらなければ薬を飲まないというのは、間違いです。処方された薬は、用法や容量を守ってしっかり服用することが大切です。 誤解が多い抗生物質について少し考えてみましょう。以前にこのコーナーで、ほとんどの風邪はウイルスによって起こることを話しました。抗生物質は、細菌を殺すための薬でウイルスには効果はなく、直接鼻水を止めたり咳を押さえたりする効果もありません。つまり抗生物質は、基本的に風邪には必要のない薬と考えていいでしょう。もちろん、原因がウイルスか細菌であるか区別できない場合には、抗生物質を処方する場合があります。また“風邪は万病の元”という言葉があるように、風邪の時に細菌の二次感染が起こることもあります。二次感染とは、中耳炎や肺炎を併発したりする場合で、抗生物質の投与が必要になることもあります。しかし抗生物質は、長期に投与するとからだに必要な細菌まで殺してしまい、下痢や抗生物質の効かない細菌(耐性菌)など様々な問題も起こってきます。抗生物質という薬を理解して、安易に抗生物質に頼らないようにしたいものです。 お薬の原則は、医師の指示を守って服用するということです。また親の責任として、服用している薬の効果や副作用を知ることも重要です。 |
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