■2004.11月号 vol.15 アトピー性皮膚炎 その一
 アトピーは、まるで流行している病気のように育児雑誌やお母さん方の話の中で、よく取り上げられます。本当は、いったいどんな病気なのでしょう。

 アトピーは、アレルギーが主な原因となって起こる皮膚の病気です。しかしアレルギーだけでなく、アトピーのお子さんの場合皮膚の防御反応に障害があり外界からの刺激によって容易に反応が起こることも大きく関係していると考えられています。乳幼児では食物のアレルギーの関係する割合が多いのですが、年齢とともにダニやハウスダストが関与する割合が多くなります。乳幼児でも食物が関係する割合は20〜30%程度で、ほとんど関係しないと言う皮膚科の先生もいます。

 診断にとって大切なことは、症状と経過です。見た目だけで、湿疹やかぶれと区別することは簡単ではありません。症状としてとても大事なことは痒みで、痒みの無いアトピーはないといっても過言ではありません。次に重要なのは、慢性的に繰り返すということです。経過は乳児期早期には顔を中心とし、次第に全身に広がり、年齢とともに関節の屈曲面に見られることが特徴です。耳切れ(耳の付け根の部分の湿疹)はアトピーの症状の特徴の一つですが、耳切れがあるからといってアトピーと診断するわけにはいきません。同じように赤ちゃんの頬が赤くカサカサしていても、よだれや食べ物でかぶれているだけなのかも知れません。だれでも毎日、口の回りに食べ物をつけたままでいれば、かぶれて赤くなってしまうものです。全身の皮膚がカサカサすることも同じと考えて下さい。冬や季節の変わり目のカサカサは、皮脂の分泌が足りないだけなのかもしれません。湿疹の出来やすさには多くの場合、体質が関係しています。例を挙げればお母さん達の手荒れがあります。同じ洗剤を使い水仕事をしても、手荒れには個人差があります。これを説明するには、体質と考えるしかありません。こう考えていくとお母さん達の心配しているアトピーのうち、ある割合はただの湿疹ということになるかも知れません。

 ではアレルギーの検査で診断ができるのでしょうか。たまたまアレルギーの検査をすると、症状がなくても陽性に出ることがあります。症状が無ければ検査が陽性であってもアトピーの病名がつくものではありません。分かりやすい例をあげれば、ダニやほこりのアレルギー検査が陽性に出ても、喘息という病名は付きません。鼻炎の症状があれば、アレルギー性鼻炎ということになるのです。検査はアレルギーの体質は示しますが、病名を付けるためのものではありません。検査には血液で検査するもの、パッチテストやスクラッチテストなどがありますが、考え方は皆同じです。これらの検査は、どちらかというと参考という程度と考えておいたほうが間違いありません。

 食べ物との直接的関係は、重要なものの一つです。卵などを食べると、明らかに湿疹が出てくる、またはひどくなるということは診断の根拠の一つです。この明らかにということが問題になります。お母さん達は皮膚にぶつぶつが出ると、それが痒みのない軽いものでも、無理やり食べ物に結びつけたがります。問題は明らかかどうかということで、これが誤解され過剰診断の原因にもなっているのです。なるべく客観的に判断して、先入観を持たないことが大切です。

 次回は、治療について考えてみましょう。


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2004.4月号 vol.9 ひきつけについて
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2003.7月号 vol.2 夏カゼ/夏に多い皮膚の病気
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