■2003.9-10月号 vol.4 麻疹(はしか)について
 麻疹という名前を知らない人はいません。しかしその怖さを知っている人は少ないようです。麻疹は、昔から“命定め”といわれ、重い病気のひとつに挙げられ、現在でも命にかかわる重要な病気です。

 症状の始まりは、熱・咳・めやに等で、普通の風邪と区別できません。その後一旦熱が下がりかけ、再び熱の上昇とともに発疹がでてきます。顔から始まる発疹は次第に全身に広がり、熱も高熱(39〜40度)になり、食欲や元気がなくなって、点滴や入院が必要となることも珍しくはありません。麻疹のみでも発熱が約一週間持続しますが、中耳炎や肺炎の合併により発熱が長期にわたることもあります。発疹は、少し色を残して次第に薄くなっていきます。麻疹は重症な病気で脳炎や肺炎が原因で、この日本でも毎年死亡する子どもが見られます。

 麻疹は、麻疹ウイルスの飛沫感染によって起こります。初期の症状はカゼと区別しにくく、伝染力が強く、発疹がでる前でもうつるため、集団や家庭では感染を防ぐことは不可能です。治療も、直接ウイルスを殺す方法はありませんから、対症療法だけとなってしまいます。もちろん対症療法ですから、麻疹を軽くすることはできません。

 重症な病気で、治療法もないわけですから、予防するしか方法はありません。現在もっとも確実な方法は、予防接種です。しかし、残念なことに予防接種率は先進国のなかでは最も低く約80%程度です。予防接種の有効性は明らかで、接種率が90%を超える国ではほとんど流行はなく、欧米では患者が年間100人にも満たないところもあります。正確な数はでていませんが、日本では年間何と10万人以上が発症しているとされています。また麻疹で死亡する子どもは、50〜100人前後もいると考えられています。日本から麻疹が持ち込まれるため、欧米諸国の間では悪名高き麻疹の輸出国として位置づけられています。最近では子どもだけでなく、成人の麻疹も問題になってきています。

 麻疹の発症数は地域によって違いますが、1998年に沖縄で大流行し約2000人が発症し、8人の乳幼児が死亡したことが大きな問題となりました。それを契機に2001年“はしか0プロジェクト”を発足させ、小児科医と行政の協力によって確実に効果が挙がっています。その後も各地で麻疹が大きく取り上げられ、麻疹撲滅のための運動が広がり始めました。

 このように大きな運動もありますが、まず身近なところからということで、1才を超えているお子さんで予防接種がまだでしたら、早めに予防接種を済ませましょう。そして麻疹の怖さを、周囲に伝えて下さい。次々と伝えてもらうことによって、麻疹に対する意識が広がっていきます。こうした草の根の運動から大きな動きにつなげましょう。


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