■2003.11月号 vol.5 発熱について/解熱剤について |
今回は、発熱についてのお話です。発熱は、ウイルスや細菌の活動性を弱め、逆に持っている免疫力を高める生体の防御反応と考えられています。生体の防御反応なので、熱を下げないというのが原則です。でも、高熱がでると重い病気と思ったり、肺炎にならないか心配する人も多いはずです。しかし実際には、熱の高さと病気の重さが比例する訳でもなく、熱が続いたから肺炎になるということもありません。生体の防御反応なので、原因がカゼであれば高熱による後遺症の心配はありません。もちろん肺炎で熱が続くことはあっても、その逆はないのです。心配は脳の病気などで高熱がでる場合です。しかし脳の病気かどうかは、素人にはわかりません。高熱で心配な場合には小児科で診てもらいましょう。 お子さんが初めて熱を出した時、あわてないお母さんはいないはずです。心配が大きいものですが、勉強するにも良いチャンスです。基本的な対応は、過ごしやすさです。熱の時期によって対応が変わることも知っておいて下さい。熱が急に上昇する場合は、顔に赤みがなく手足が冷たくなることがあります。大人では寒けを感じるような情況です。その時は毛布を掛けたり、環境を調節して、暖めることが必要です。熱が平衡に達し手足が熱くなり、顔色も赤くなると、今度は暑く感じます。熱が出て暑いのにお布団をいっぱい掛けられたら、きっと苦しいはずです。こんな時は冷やしたり、薄着をさせるよう、心がけて下さい。 熱があっても子どもたちは、大人と違って意外に元気なものです。熱が高くても頬に赤みがあれば、あまり心配ありません。食欲は減退しますが、無理せず水分の補給を心がけましょう。 解熱剤について まず、理解してもらいたいことは、解熱剤は熱を下げるだけで病気を治す薬ではないということです。ある程度元気なら、熱の高さだけでは、解熱剤を使わないようにしたいものです。解熱剤は熱を下げる薬ではなく、苦痛を取る薬と考えるといいでしょう。苦しくなければ、40℃を超えても使う必要はありません。熱がお子さんに悪影響(苦痛)を与えている場合(元気がなくグズッて寝つけないなど)に、それをとることを目的として使いましょう。具体的には38.5〜39℃以上で、苦痛を取る目的で必要最低限というのが基準となります。日中で充分な観察ができれば解熱剤の必要はあまりなく、むしろ夜は子どもを安眠させるため、疲れているお母さんが休むため、という使い方があることも覚えておきましょう。 さて、薬剤としての解熱剤についてですが、子どもに使える薬剤の種類は副作用が問題となり、現在ではほとんどアセトアミノフェン一種類です。この薬は歴史が古く、比較的安全な薬です。インフルエンザ脳炎脳症の発症との兼ね合いから、ポンタール(メフェナム酸)、ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)は使われなくなりました。乳児には坐薬が中心として用いられますが、投与の簡単さと確実さからです。口から飲ませる場合は、吐き出したり、誤飲する心配が出てきます。坐薬のもうひとつの利点は、吐いたりした場合やけいれんの後にも使えるところです。 1歳を過ぎれば、使える剤型も広がります。投与しやすさという点からは、やはり坐薬に軍配が上がります。もちろん服用が充分可能になれば、シロップや散剤でもかまいません。ただし、シロップの欠点は坐薬や散剤と比べて保存期間が短いということです。 3歳から4歳を過ぎると、坐薬に対する抵抗が増えてきます。嫌がる子どもを押さえ付けて坐薬を使うことは恐怖心を植えつけることになり、決してよいことではありません。苦痛を取るために使う目的なのに、その前に苦痛を与えるのでは意味がありません。飲めるようになったら、徐々に経口薬に移行するよう心掛けましょう。 最後にひとつ、“坐薬は強いから使わないようにしている”という話を聞くことがあります。確かに坐薬の方が効果は早く出ますが、逆に経口剤の方が効果は長続きします。これは強いということではなく、吸収の違いによるものです。このような剤形による違いも覚えておくといいでしょう。 |
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