■2004.2-3月号 vol.8 喘息について
前回の咳についての時に少し触れましたが、今回は喘息について考えてみましょう。

 いったい喘息とはどんな病気なのでしょうか。簡単に言うと、アレルギーによって気管支の先端に炎症が起こり、空気の通り道が狭くなる病気です。喘息というと咳が思い浮かびますが、中心となるのは気管支が狭いための症状です。喘鳴と呼ばれヒューヒューとかゼーゼーしたり、息苦しさや呼吸困難を引き起こすこともあります。そのような状況では、呼吸が速く深くなり、息苦しさをうまく表現できない乳幼児では、夜眠れない、機嫌が悪い、動かない、喋らないなどの症状として表れることもあります。咳も一つの大事な症状ですが、咳が長く続くだけで喘息と診断するわけにはいきません。喘息は長くお付き合いする病気ですら、我々小児科医も診断は慎重にならざるを得ません。喘息の診断は、特徴的な症状だけでなく、症状の繰り返しや本人及び家系のアレルギーの存在など参考にします。喘息はアレルギーが原因ですが、アレルゲン(アレルギーを起す物質、例えばハウスダスト等)の存在のみで起る、通年型は比較的少数です。多くは季節の変わり目見られ、風邪などの感染症、気象状況などが関係し、季節型と呼ばれています。

 喘息様(性)気管支炎という病気を聞いたことがありますか?。喘息みたいな気管支炎で、乳幼児に多く、ヒューヒューやゼーゼーが特徴です。ウイルス感染や本人の体質が関係し、年齢とともに起こりにくくなっていくことが特徴です。一方、乳児喘息と呼ばれるものがあり、将来的に喘息に繋がっていくものもあります。両者の区別は難しいことが多いのですが、アレルギー検査が一つの参考になります。

 アレルギー検査についても、少し触れておきましょう。「喘息の診断のためにアレルギー検査をした」「咳が続いて、検査をしたら喘息と言われた」「反応が強いから、重症の喘息と言われた」という話を耳にします。アレルギーの検査の種類には、アレルゲン(アレルギーの原因)の反応を皮膚で判断する方法と、血液でアレルゲンに対する反応の強さをみる方法があります。喘息の診断は、症状・所見・家族歴等を総合して行うもので、アレルギー検査はあくまでも補助的なものと考えています。検査はアレルゲンに対する反応をみるためであって、喘息でなくても陽性にでることがあります。また皮膚の反応と血液の反応が一致しないこともあります。検査の反応の強さも、喘息の重症度と必ず相関するものでもありません。費用がかかる検査なので必要性についてよく相談し、結果に対して十分な説明・指導を受けることが重要です。

 もうひとつ、体質改善のことを考えてみましょう。アレルギーを起こさない体質に変えることができれば、喘息も花粉症もいなくなってしまいます。昔からさまざまな方法が試みられましたが、どうも体質改善は難しいようです。「体質改善の薬を飲んでいる」という話を聞きますが、多くの場合は抗アレルギー剤です。抗アレルギー剤は、体質を変える訳ではなくアレルギーの反応をおさえる薬です。アレルギーを押さえて症状を軽くしたり出ないようにすることが目的です。効果が100%出るものではなく、効果にも個人差があり判定が難しい薬のひとつです。長期にわたって服用する薬なので、その目的をよく理解して続けることが大切になります。


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