■2003.8月号 vol.3 熱中症について
 熱中症という言葉を、聞いたことがありますか?ちょっと難しい話になりますが、高温の環境下で体温の調節がうまくいかなくなった状態が、熱中症とか熱性障害と呼ばれています。また、特に症状が重い状態を熱射病と呼んでいます。原因としては高温の環境であること、また湿度が高い環境、水分の摂取量、運動や労働なども関係しています。初期症状としては体温の上昇はありませんが、元気がなくなり下肢にけいれん(こむら返り)などが見られます。少し症状が進むと嘔吐、頭痛や脱水症状が見られるようになります。このような状態が、熱射病で、放置すれば体温(40℃を超えることも)が上昇し、意識障害やけいれんなどの脳の症状、低血圧などのショック症状も見られ、重症の場合には多臓器不全(様々な臓器の働きが一度に低下すること)により死亡することもあります。毎年少なくとも50人以上が、熱中症で死亡しているといわれています。また直射日光が原因の場合には、日射病と呼んで区別されていますが、基本的には同じ状態です。

 では、どんな状態が危険なのでしょうか。乳幼児では車内や密閉された室内の高温の環境、学童期以降では高温下での激しい運動が原因とされています。親が目を離した隙に、毎年車の中で子供が亡くなったという悲しい報道があります。これが熱射病の典型なのです。

 まずは、予防することが大切です。しかし予防すること以上に大切なことは、まず熱射病ということを知ることです。熱射病は、生命にかかわることがあるということを知って下さい。予防法としては、大きくわけて二つあります。まず高温の環境を避けることです。特に直射日光下の車の中は60℃以上にもなることがあり最も危険です。短時間であればなどと考えずに、決して車には子供を置かないようにして下さい。室内でも同じことが起こることもあります。風通しを良くすることはもちろんですが、扇風機やエアコンなどを上手に使うことも必要です。もちろん冷やし過ぎには十分な注意を払って下さい。もう一つの予防法は、水分の補給です。時々外来で、「のどが渇いて欲しがるときは、好きなだけ与えていいのか」と質問されます。もちろん、子供のわがままで甘い飲み物を欲しがる場合は別ですが、高温の環境下であれば好きなだけ与えて構いません。大量に汗をかいた場合にはイオン飲料が理想的ですが、基本的に与えるものは麦茶など、何でも構いません。

 暑さが続き、何となく元気がなくなってきたような場合には、要注意です。過ごしやすい環境にして、十分な水分を与えることが大切です。水分や塩分が失われるので、治療として理想的なのはイオン飲料です。また夏風邪などで高熱が続いたり水分が取れない、嘔吐や下痢が続く場合は、熱中症になりやすいので十分気をつけて下さい。そして元気がない、水分が取れない、ぐったりしている、尿量が少ないなどの場合には、早めに受診して下さい。

 この季節は、環境に十分配慮し、水分を多めに与えることを心がけて下さい。


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