外来小児科におけるインターネットの活用

かわむらこどもクリニック(仙台市) 川村 和久

はじめに
 外来小児科とINTERNET(INET)活用には、様々な方法がある。先進的なものとしては遠隔医療など、医療現場でも様々な形で利用されている。またHOMEPAGEを開設する医療機関も増え、医療相談、情報収集や情報交換などにも利用されている。一方小児科医の役割が見直され、育児支援の重要性も指摘されている。1993年開業以来、様々な育児支援の方法を試みてきた。1996年にはHOMEPAGE(以下HP)を開設し、アクセス数は20万件、E-mailによる医療相談は3,000件を越えている。また2000年10月からはかかりつけ患者専用Mail addressを設定し、「患者の不安・心配の解消」とCommunication toolとしてINETを利用している。
 今回、一弱小開業医が実践しているINETの活用法を紹介し、医療相談の問題点やアンケートを通 して浮き彫りにされた患者の心理についても検討する。
1.HP開設までの経緯
1) 開業までの経緯
 新生児医療を通して、患者達から様々なことを学んだ。多くの母親達が流した、悲しみや喜びの涙に育てられたと言っても過言ではない。学んだ最も重要なことは、「母親の不安・心配の解消」である。1993年2月他県のNICU勤務から、出身地である仙台市で開業した。市中病院との希薄な関係での開業で、何らかの特色と周囲の医療機関と競合するための差別 化が必要だった。
2) 開業からHP開設までの経緯
 「母親の不安・心配の解消」の理念で診療に当たるとともに、実践のため「かわむらこどもクリニックNEWS」を1993年6月に創刊し、現在(2001年5月)95号を発行した。1面 は医学的な話題や情報として、『開業の思想』、『お父さんの役割』、『母親の責任について』など掲載している。2面 は『発熱について』、『喘息について』、『アトピーについて』など病気の説明・対処法、予防接種のお知らせや感染症の月別 集計などを掲載している。最近では患者とのコミュニケーションを目的にした「読者の広場」が中心で、投書、手紙、E-mailなどを紹介している。パソコン(PC)のDTPソフトで作成、簡易印刷機で印刷し、来院患者全員に無料で配布している。院内掲示はカラー印刷として、近隣産婦人科医院にも配付している。また県内版の新聞に病気の説明や症状の対処法を500字程度で解説した小児科ミニ知識として掲載し、読者からの反応は良好であった。
 院内報は作り手の意図に反して、読まれていない印象を持った。ちょうどこの時期一般 家庭へのINETの普及が始まり、個人のHPが開設され始めていた。院内報を発行するにつれて情報とは受け取られなければ、ただのDataに過ぎないとの考えに至った。より有効な情報提供の手段としてのINETに注目し、求める保護者達に情報を提供するため1996年1月HPを開設した。またPCで作成した院内報や小児科ミニ知識のDigital化されたDataの蓄積も、HP作成を容易にした。
2.かわむらこどもクリニックHOMEPAGE(図1)
 What's Newでは新しく掲載された情報、クリニック案内では診療時間、所在地、開業理念など、CLINIC NEWSでは院内報の一面記事、小児科ミニ知識では病気の説明や症状の対処法など、質問箱ではmailによる相談を受け、Q&Aコーナーでは過去に寄せられた質問と答えをQ&A形式で250件掲載し、院内報(PDF)では院内報をPDF形式で掲載、掲載誌紹介コーナーではHOMEPAGEや小生の記事が掲載された雑誌などのメディアを紹介している。Dataの蓄積もあり、開設時から40ページを超えていた。また小児科ミニ知識は、i-MODEでの閲覧にも対応している。
1)アクセス数の推移(図2)
 topページのアクセス数を図2に示すが、INETの普及拡大とメディアでの評価にともない加速度的に増加し2001年4月15日現在230,014件を数え、月平均8,000件程度となっている。
2)E-mailによる医療相談  INETでは双方向性が重要な要素であるにもかかわらず、一方向のみの利用であった。理念である「母親の不安・心配の解消」をより発展させる形として、1996年3月より医療相談を開始した。回答の範囲、記載上の注意、責任の所在などを明記し、承諾者だけから相談を受けるようにした。原則として相談者全員に、1週間以内の回答を心がけている。
@医療相談の傾向と内容についての検討
 前期(1996.3-1998.1)396件と後期(2000.1-2000.3)361件について、年齢別、男女別 、居住地別、相談内容別、診療科別について検討した。
・医療相談数の推移(図3)
 当初は僅か月10件程度で、総数が500件に届くまで2年3ヶ月かかったが、INETの普及率の増加と雑誌などでの評価にともない、次の500件では10ヶ月、その次の500件では6ヶ月と加速度的に増加し、2001年3月末3058件となった。月別 相談数は季節などで差があるものの、最近では月100件を超えるようになった。  
・年齢別 1歳未満が40%と最も多く、以後年齢が長ずるに従い減少している。3歳未満で全体の2/3を占めている。年少児ほど不安が多いことを示している。  
・居住地および男女別
 居住地別では、海外からの相談が5%程度を占めていた。INETによる医療相談の特徴がよく現れていた。男女比では、初期には男性の割合が高かったが、次第に女性の割合が高くなり、INETの家庭普及にともない、女性でも簡単に送れるようになったことを示している  
・相談内容
 医療相談を内容別に分類すると病気や症状に対する相談が80%を占めていた。  
・診療科別
 医療相談を診療科別に分けると、小児科が60%と最も多かった。皮膚科の相談が多いことは、アトピーの相談が多いことが原因であった。その他成人例もあり、診療科は多岐にわたっている。


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