前回お話ししたように、こどもに使える薬剤の種類はあまり多くありません。乳児の場合は、ほとんどは坐薬として、アセトアミノフェンを投与します。この薬は歴史が古く、
比較的安全な薬です。乳児に坐薬が中心として用いられる理由は、投与の簡単さ、確実さからです。口からのませる場合は、吐き出したり、誤飲する心配が出てきます。坐薬のもうひとつの利点は、眠つていたり、けいれんの時にも使えるところです。
1歳を過ぎれば、使える剤型も広がります。投与しやすさという点からは、やはり坐薬に軍配が上がります。もちろん服用が充分可能になれば、シロップや散剤でもかまいません。シロップは、メフェナム酸が投与されることが多く、アセトアミノフェンより効果
が強く、鎮痛作用も期待できます。ただし、シロップの欠点は、坐薬や散剤と比べて保存期間が短いということです。上手に薬が飲めるようになったら、常備薬としての解熱剤は、散剤を準備しておくのがよいでしょう。
3歳から4歳を過ぎると、坐薬に対する抵抗が増えてきます。嫌がるこどもを押さえ付けて、坐薬を使うことは恐怖心を植えつけることになり、決してよいことではありません。徐々に、経口薬に移行するように心掛けましょう。
最後にひとつ、“坐薬は強いから使わないようにしている”という話を聞くことがあります。剤型の違いで強さの差が出るのではなく、薬剤の違いによるのです。使っている薬剤の内容や投与量
にも注意を向けましょう。
解説:インフルエンザ脳炎脳症の発症との兼ね合いから、ポンタール(メフェナム酸)、ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム)は使われなくなりました。解熱剤と脳炎脳症の関係は100%解明はされていません。今まで以上に解熱剤の使い方には、注意が必要になってきています。特にボルタレンは小児では禁忌と考えられるようになりました。当院では従来から、ほとんど使用してはいません。散在もアセトアミノフェンを使用するようになりました。(06/15/2001)