医療相談で最も問題となることの一つは、Second Opinionである。医師の診察を受けたあとでの質問をSecond Opinionとし、その割合は42%だった。医師は十分に説明しているつもりでも、患者が程度理解しているの判断は難しい。また十分な説明を受けてないと相談されても、一方的な意見なので真偽のほどは明らかではない。少しでもこの医療相談の背景を明らかにするための設問とした。主治医の説明(図7)では、受けたが56%と半数を越えていた。内心安心したことは言うまでもない。次の設問でもわかるように。他医の意見を求めた理由(図8)では、説明してもらったが不安がとれなかった49.3%、説明も理解も出来たが他の医師の意見を聞きたかった26.4%、聞きたくても話してくれなかった12.2%、説明してくれなかった6.1%、説明してもらったがわからなかった6.4%、であった。回答に危機感をいだいていたが、医師が説明してくれなかったのは比較的少数で、これも一安心であった。

 INETの背景を探る目的で、小児医療に対する意見要望についての設問を作った。記述式にもかかわらず、134件(59%)で意見や要望が述べられていた。要望を要約すると次のようになる。小児科の医療機関が少ない、小児科専門医が少ない、いつも混雑している、待ち時間が長いなどで、理由としては小児科医は収益が少ないため、希望する医師が少ないとの指摘もあった。診療報酬を小児科に有利なようにとの意見もあり、なるほどと感心した。他には夜間休日の受け入れや救急医療に対する要望、母親の精神的なケアや情報公開の必要性も指摘されていた。ほんの一部であるが、寄せられた要望を示す。
  「若い先生は「はしか」も診断できませんでした。さらに、専門外の先生も診療科目に小児科の看板を掲げていることが信じられません。」、
  「小児科医って他の科に比べて儲けが少ないと聞きます。もっと儲けがあれば小児科医になりたいって医者が増えそうなのに・・・。小児科って本当に大切ですよね。一番人の良さそうな医者のいる業界なのに」
4.かかりつけ患者とのCommunication
 開業以来、「患者の不安・心配の解消」やコミュニケーション作りのため、院内報の発行、投書箱の設置、個人のE-mail Addressの公開などを行っていた。HP開設以来患者からE-mailを受けているが、年間数十通 程度だった。不特定の悩める保護者に対する相談を進めるうち、当院を支えてくれる保護者に対する育児支援の重要性を再確認するとともに、より深いコミュニケーション作りの方法として、育児サークル「お母さんクラブも開催している。
@かかりつけ患者専用Mail addressの設定
 従来HPはプロバイダのディスクスペースを間借りしていたが、2000年10月よりkomodo-clinicドメインを取得し、レンタルサーバーを使用中である。Mail addressの発行も自由に行えるため。INETを利用した不安心配の解消とコミュニケーション作りの目的で、かかりつけ患者専用のAddress(patient@kodomo-clinic.or.jp)を設定した。
A患者からのE-mailの集計
 従来から投書やE-mailを受け付けていたが、年間数十通程度であった。専用Address設定による、E-mail数の推移を図8に示す。最初は10件程度であったが次第に増加し、6ヶ月間で111通 になった。送信方法ではPCが多いことは言うまでもないが、携帯電話の割合が35%をしめ、今後益々利用される可能性がある。E-mail内容を図9に示すが、医療相談が34%と最もく、発熱時の対応や、再診の必要性などである。医療相談が多く仕事量 が増えると思われたが、予想に反して感謝やお礼のE-mailの割合が高く33%を占めていた。従来はお礼感謝を伝える手段が少なく、E-mailという簡単で便利な方法が有効に利用されている。報告は、病院受診や他院での検査などの報告であった。お見舞いを10通 頂いたが、小生の不注意による骨折入院に対するものであり、医師として有り難い限りであった。

  具体的なE-mailを次に示す。「ここしばらく子供が病気にならないので、先生に会わなくなり寂しい?なと思っていましたが今日は私が風邪をこじらせ院をたずねました。耳が痛いので本当は耳鼻科を受診しなければならないのでしょうが、行きたい耳鼻科がなかったのでカワムラ先生に診ていただこうとすぐに決めた次第です。先生に診ていただいただけで治った気分になるから不思議。けど以前より先生がお疲れのように見えたのは私だけでしょうか?学会やその他出席しなければならない仕事がたくさんあるんですもの。慢性疲労ですね。生きがいとはなんだろー?と考えると、自分を必要としている誰かがいるから、なんですよね。でも、たまには自分の為にわがままになるのは必要だと思いる。先生が大好きなママ達やチビッコ達は離れませんよ。足の骨折も少し休養しなさいという神様の仕業かも。私も腕の骨を2度も折っている。脂汗を流して息ができなくなるほど痛かったです。とにかくあまりストレス溜めないでくださいね。このメールの返事はいりません。久し振りに受診したフミカママより」
 患者専用のMail addressの設定は、不安や心配の解消に役立つだけでなくCommunication toolとして非常に有用である。また患者からのお褒めや遺漏の言葉、お見舞いを猗あた抱くなどうれしいかぎりであり、INETの成せる技であると確信している。 院内のLAN  現在INETには、フレッツISDNで常時接続して、端末は院長室のみならず、診察室、看護婦室、待合室に設置している。スタッフ全員にMail addressを持たせ、クリニック全体としての患者とのCommunicationに利用したいと思っている。
まとめ
 小児医療と不安・心配の解消は切り離せないもので、小児科医が担う育児支援の方向性の一つである。外来小児科におけるINET活用の実例として、HPの開設までの経緯とを紹介した。HPのアクセス数は20万件を越え、評価されている。医療相談は3000件を越え、INETの特徴が良く表れていた。アンケート結果 では、医療相談に対して満足し、将来的に益々必要となると判断している。  医療相談が必要となる背景としては、小児科医療機関および小児科医の不足が根底にあり、医療機関の混雑によって医師とのコミュニケーションが取れないことが大きな原因である。診療報酬を含めた現在の医療体制の中で、十分なコミュニケーションは不可能であり、今後もインターネットの医療相談が必要であると思われる。患者専用の E-mail addressは、患者の不安・心配の解消ばかりでなく、コミュニケーションにも役立っている。医療相談数は日に日に増加している、医療相談に費やす労力は並々なるものであり、将来的には個人のボランティアに頼らない公の相談窓口やかかりつけ医の対応などが望まれる。  最後に、従来から様々な育児支援を試みているが、今後もクリニック全体として「患者の不安・心配の解消」に努力したい。


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