かわむら こども クリニック NEWS 平成12年 2月号
夜泣きを考える
子育ての経験があるお母さん達は、多かれ少なかれ夜泣きに悩んだことがあると思います。今回はその夜泣きにスポットを当て、考えてみたいと思います。
まず夜泣きとはいったい何なのでしょうか。もちろん言葉だけをとらえれば、赤ちゃんが夜泣くことを指すのです。この全てを夜泣きと呼んでいいものなのでしょうか。もちろん違います。明らかな原因があるものは、実際の夜泣きとは区別されていることが多いのです。しかし夜泣くことは同じなので、広い意味での夜泣きと考えてもいいでしょう。生まれてからしばらくの間赤ちゃんは空腹のために、夜中に何度も泣きます。この場合には哺乳で満腹になると、また寝てしまいます。他に明らかな原因と考えられるものに病気があります。鼻が詰まったり咳がひどかったりして、苦しくて泣くこともあります。下痢や腹痛も同じようにその原因になります。また。極端に熱い寒いなどの環境も関係していることもあるでしょう。このような場合には原因を取り除けば泣かなくなるので、いわゆる夜泣き(狭い意味での夜泣き)とは区別して考えるべきでしょう。
では夜泣きはどうして起こるのでしょうか。しかしこれについては、はっきり解明されているわけではありません。夜泣きは乳児期早期ではあまり見られず、中期以降から多くなってきます。発達の段階で見ると、親を区別する時期や人見知りの時期と重なってくるのです。また睡眠の発達も関係しているようです。乳児期早期の睡眠のリズムは、大人のように昼とか夜の区別はできず一日に何回の睡眠をとっているのです。そしてこの睡眠と覚醒のリズムが、次第に確立されていく時期なのです。また大人で夢を見るとされているREM睡眠も、乳児期中期から確立されていくとされています。以上のことを総合すると、知能と睡眠の発達が、夜泣きに関係しているようです。おそらくは日中の経験など様々なことが刺激になり、夢を見ているような状態で泣くのが、夜泣きなのでしょう。多くの夜泣きはもうろうとした状態で、あやしたり抱っこしたりしても泣き止まないことから見ても明らかです。夜泣きは脳の発達段階のひとつの現れなので、病気や異常とは考えられず、夜泣き自体が正常なものであると考えなければなりません。
夜泣きの原因が多少わかったところで、では対策はあるのでしょうか。まず第一は夜泣きの原因となるものを除いてあげることです。狭い意味の夜泣きについてはどうでしょう。これは成長の発達段階で夢を見ているようなことですから、確実な対処法というものはありません。強いて挙げるなら、寝る前にあまり興奮させないことぐらいです。大人でも夢を見る場合には、精神的な要素も関係しています。楽しいこと不安なことが、ひとつのきっかけになることはよくあります。健診等で夜泣きの相談を受けたとき、「今日健診で大泣きしたから、今夜の夜泣きはひどいかもしれないよ」と、笑ってアドバイスします。もうろうとして泣いているのですから、お母さんがあやしても赤ちゃんは健診の川村先生が声をかけていると思っているかもしれません。夜泣きがひどくどうしてもという場合には、少し刺激を与えてお母さんがいることを見せて安心させる方法もあります。その他、抱っこするとかドライブに行くなど、様々な方法がとられています。夜泣きの時に哺乳をしていいかどうかと聞かれることがあります。赤ちゃんは夜泣きをしても、次の日は平気です。でも大人は違います。毎日の夜泣きでストレスがたまり睡眠不足も重なって、なかなか大変です。お母さんが不安定になれば、それを感じて赤ちゃんの夜泣きもひどくなるかもしれません。お母さんのためにも赤ちゃんのためにも、夜泣きが改善するのであれば夜間の哺乳を制限する必要は全く無いでしょう。そして睡眠不足になるようであれば、日中にうまく睡眠をとることも大切です。
夜泣きは乳児期中期に始まり、個人差はありますが1才6ヶ月ぐらいまでには見られなくなります。正常な発達のひとつの段階と考え、待ってあげるという気持ちを持つことが大切でしょう。
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