かわむら こども クリニック NEWS  平成25年6月号


仙台市のワクチン助成

 仙台市では、来月から水痘・おたふくワクチン接種費用の一部助成が始まります。また、対象者は限定されますが、風疹(MR:麻しん・風しん)ワクチンの全額助成も開始されました。今回は任意接種ワクチンの助成について紹介しましょう。

 仙台小児科医会(会長)では、2010年髄膜炎関連ワクチン助成獲得のため、街頭署名活動、市長への要望書提出、市民公開講座開催など、市民と行政、小児科医が一体となって早期助成が実現しました。活動を通して、行政とは強い繋がりを作ることができました。そのような繋がりの中、昨年度小児科医会では、“水痘・おたふくワクチン接種費用助成獲得”に取り組みました。感染症対策課との水面下の交渉を経て、12月6日市長宛に「 水痘・おたふくかぜワクチン接種に公費助成を求める要望」を提出し、平成25年度から水痘とおたふく予防接種の公費助成が決定しました。

 我々仙台小児科医会は、子どもたちの健康のため、様々な事業に取り組んでいます。今回の助成獲得では、人口が多い政令指定都市であること。トップダウンではなく、仙台小児科医会の事業が認められたことに大きな意義があると思っています。

 概要については2ページで紹介しますが、ひとつだけ追加しておきます。両ワクチンを接種済みの場合、水痘ワクチンの追加接種(初回接種から3〜6ヶ月)は可能ですが、おたふくワクチン(初回接種から3〜5年)は原則として適応はありません。将来的には定期接種となると思いますが、水痘は接種未接種にかかわらず、おたふくは未接種者は必ず接種しましょう。

 話は変わって、風しん(MRワクチン)接種費用全額助成が5月31日に発表されました。おそらく、ご存知のない方もいると思います。ちょっと、面白い経緯があるので紹介します。
  昨年からの首都圏における風疹の流行と先天性風疹症候群の発症を受けて、個人的な立場で仙台市の担当部署に度々助成を要望してきました。奥山市長は5月14日の記者会見で、「市として今さらにこれを公費助成の制度として立ち上げていく考えは、今のところ持っていません。個人の方が、努力していただくという段階で、対応可能ではないかと思っています。」と述べました。
  このコメントを聞いて、「市長選も近いので、前向きに検討したい」ぐらいは言って欲しかったと、またまた担当部署に訴えました。その影響とは思いませんが、5月28日の記者会見では「今、担当局には早急に風疹の予防接種の助成を仙台市内で実施する場合の課題と実施案がどのような形で立てうるかという点について整理するように指示を出しています。近々、実施に向けて調整をしたいと思っています。」と、急に実施の方向に変わりました。直後から担当部署から問い合せがきて、急転直下31日に「成人の風疹予防接種費用の全額助成を実施します」の記者発表となりました。担当部署との連携もあり、医療機関ではもっとも早く記者発表資料を手に入れることができました。

 接種の概要に関しては2ページをご覧ください。 さて、風疹の接種費用が助成されるのはいいことですが、これで充分というものではありません。
  風疹の問題に関しては、3月号の「風疹、今そこにある危機」で詳しく解説してあるので参考にしてください。簡単に紹介しますが、風疹は、かつてない大流行です。従来の流行は子どもが中心でしたが、最近の統計では7割以上は男性で、うち20代~40代が8割を占めています。成人男性の罹患が増えている理由には、1994年以前は対象者が中学生女子に限られていたこと、25~33歳の男性は制度移行期で接種率が低かったことも関係しています。平成23年度の感染症流行予測調査によると、30代から50代前半の男性の5人に1人は風疹の免疫を持っていず、20代の男性は10人に1人は免疫を持っていませんでした。本来は男性に接種を受けてもらうことが重要です。

 幸い、女性の助成があるので、2人接種しても半額で済むという訳です。助成が始まったからというものではありませんが、せっかくの機会ですからお母さんはもちろんのこと、是非御主人(パートナー)も接種を受けましょう。


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