かわむら こども クリニック NEWS  平成6年10月号


予防接種法改正

 今月1日から、予防接種法が一部改正になり、予防接種の方法が少し変わります。今日は、そのことについて話してみましょう。
 今回の改正は、実は政治的要素が大きく、『予防接種による副反応の責任は国が持たない』という発想から生まれてきたものかも知れません。
 もっとも大きな変更は、今まで定期接種として義務づけられていた予防接種が、義務ではなくなり、勧奨接種という扱いになったということです。勧奨接種というのは、『受けなければならない』ではなく、『受けるように努めなければならない』ということです。形の上からは、個人の意志の尊重といえますが、果たしてそうでしょうか。個人の意志の尊重は、大変大事なことです。もちろんそれを否定するつもりはありません。しかし歴史的事実に目をむければ、予防接種は病気の撲滅や流行の阻止に十分効果があったことや一時的中止で罹患率(病気にかかる割合)が増えた(三種混合の見合わせで百日咳が増加)のも事実です。当然厚生省は、勧奨接種にすることによって、予防接種の接種率が下がることを危惧し、我々に接種率が下がらないように努力を求めています。こういう矛盾点から、政治的要素と邪推されても仕方ありません。
 そのかわりといっては何ですが、改善された部分もあります。それは健康被害救済制度の充実です。予防接種をしたことによって、万が一健康被害がおこった場合の給付額や認定をスムーズにすることなどが改善されています。現在の予防接種では、接種による健康被害を0にすることは、医学的に見ても不可能です。しかし努力により、それを最小限にすることや不孝にも健康被害がでた場合の救済に関しては、充実するに越したことはありません。
 また接種にあたっては十分な問診、診察を行うことや予防接種を通常の診療とは別(当院では小児科の常識として、予防接種の時間帯を別にして開院以来行っています)に行うことなどを求めています。これは当然のことであり、どうして記載されたか不思議です。小児科の専門医ならば、常識として行ってきたことです。
 さてお母さん方は、どう考えたらいいのでしょうか?。結論を先に言ってしまえば、従来どうりでよいと考えるべきです。病気を予防するための予防接種です。義務の場合は集団的な防衛の要素が大きかったわけですが、勧奨接種になるからには個人の防衛と考え、自分子供を病気から守るという根本的な立場にたって、今までと同じように、予防接種を受けるべきと考えてください。
 最後に、今回予防接種法の改訂により問診票の形態が変わり、ご面倒をおかけしますがよろしくお願いいたします。
クリニック NEWS コーナーに戻る