かわむら こども クリニック NEWS 平成12年 8月号
紫外線は怖い!?
最近夏休みになったせいか、真っ赤に日焼けした子どもたちを多く見かけるようになりました。御存知の方もいるとは思いますが、母子手帳から日光浴という言葉が無くなりました。少し時期がずれた感がありますが、今回は紫外線について考えてみたいと思います。
今から40年前には「夏休みクロンボ(これは差別用語でないことを明記しておきます。念のため。)大賞」というものがあり、真っ黒な日焼けが健康のシンボルとされた時代もありました。小生もプールカードをハンコでいっぱいにした思い出もあります。しかし最近は黒いこと(=日焼け)は、罪ということが言われるようになりました。でもこれは真実なのでしょうか。
まず最初に、すこし紫外線について説明の必要があるかもしれません。紫外線には3種類あり、それぞれA、B、Cと分けられています。難しい話になりますが、最も波長が短いものをC紫外線と呼び、人体に大きな悪影響を与えます。フロンガスによってオゾン層が破壊されるということを聞いたことがあると思います。オゾン層はC紫外線が地表には届かないようにブロックしているのです。またオゾン層は他の紫外線の通過も妨げるのですが、この破壊により紫外線の通過量が増えていることは事実です。紫外線の害についてはいくつか指摘されています。一つは皮膚の老化です。長期に渡り紫外線を浴び続けている人と浴びていない人では、しわの数や深さ、しみの範囲などが異なり、紫外線は皮膚の老化を早めると考えらています。また皮膚ガンの発生率が高いということも、紫外線と関係があると言われています。紫外線は細胞の中のDNAを傷つけることが確認されています。しかしこの傷のほとんどは元通りになるのですが、紫外線の長期に渡る影響が皮膚ガンの原因の一つとされています。また確認されたものではありませんが、紫外線の影響で免疫が低下するというデータもあります。こう考えると怖いことばかりです。
しかし実際にはもっと心配なことがあります。夏になったからといっていきなり炎天下の元で皮膚をさらけ出すようでは、これは大きな問題です。日焼けというのは、一種のやけどなのです。やけどの程度が強ければ、発熱したり場合によっては脱水を起したりと、かなりの悪影響が出ることも事実です。子どもは楽しいと思えば、真っ赤になっても遊ぶのをやめません。大人は暑ければ日陰で休むというともあります。日陰で休んでいる間も、子どもの皮膚のやけどはどんどん進んでいくのです。
では全く日を浴びないことが正しいのでしょうか。しかしこれは日焼けということだけでは解決できません。子どもは友だちと遊ぶことが、とても大切です。“うらなりひょうたん”(色の白い子ども)で友だちもいなく、遊び相手はゲームだけ、それでは日焼けよりももっと心配な状況です。ただでさえ今の子どもたちは、外で遊ぶ機会が少なくなっているのです。日の光はカルシウムの吸収などに関係するビタミンDを作る働きがあります。日の光の中で全身を動かすことは、血液の循環を良くし健康な身体を作ります。このことに対しての疑いはないでしょう。また別な医学的な見地からは、日焼けは健康に良いと言われているも事実です。
しかし紫外線の怖さをしっかり認識することは、とても大切なことなのです。日焼け一つにしても、子どもが管理できるのものではなく親が管理することなのです。もちろん真っ赤になるほどの日焼けは、絶対避けるべきでしょう。1年を通すと紫外線は4月から8月にかけて強く、6月に最も強くなるのです。紫外線が強くなりだしたころから、紫外線の悪影響を考える必要があります。また日中の時間帯でも強さが違い午前10時〜午後2時の間が最も強くなります。この季節や時間帯を知って、紫外線が強い時には直射日光を避けるような工夫が必要です。帽子をかぶり長袖の服などをうまく活用し、状況によっては日焼け止めなどを使う工夫も必要かもしれません。
紫外線に害があることは事実ですが、元気に遊ぶことはもっと大切なことでしょう。それぞれの必要性を計りにかけ、うまく対応するようにして下さい。くれぐれも極端な日焼けには御用心を。子どもだけでなくお母さん、しみがまた一つ増えてしまいますよ!。
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