かわむら こども クリニック NEWS  平成9年 6月号


子どもの病気 うそ?ほんと?

 今回誤解されている子どもの病気、症状、対処法について、例を挙げて解説していきましょう。
 内容のほとんどは、今までの新聞記事で紹介されています。もう少し詳しきしりたいときには、今までの記事を参考にして下さい。
・熱が高いと脳に障害が出る。
 何度も外来で話していますが、脳の病気や熱中症等で熱のコントロールができない場合や病気自体で脳が障害されることがあります。しかし一般的な風邪や肺炎等では、熱のために障害が出ることまありません。
・熱が高いと耳が聞こえなくなったり、目が見えなくなったりする。
 これももともとの病気で神経などが置かされる場合には可能性がありますが、熱の直接の原因ではないと考えられています。昔は薬による副作用ということがありましたが、今ではあまり使われず当院ではもちろん使用していません。
・熱が出たら保温に気をつける。
 これも確かに当たり前のことです。熱が出た場合に環境作りの基本は、過ごしやすさです。熱が上がり始めで寒けがするときは温め、熱が平衡に達したら涼しくしてあげることです。保温を気にしすぎるあまり、あまり色々なものでくるんでしまうとかえって熱が上がってしまうことがあります。夏などは、扇風機やクーラーを利用するのもよいでしょう。但し冷やし過ぎにはくれぐれも注意して下さい。
・熱が出たら、おでこに冷却シートを貼れば大丈夫。
 熱が出たときにはおでこ(頭)を冷やすことは一般的に行なわれています。お母さんたちの中にも子どもの頃頭を冷やして看病してもらった記憶があるでしょう。おでこを冷やすだけで体温を下げるには不十分ですが、子どもは頭の割合が大きいため効果的と考えられています。タオルなどでは何度も取り換えなくてはならないことも経験します。冷却シートだけではもちろん不十分です。一時的に冷たくして、気持ちをよくしてあげる程度と思ったほうがいいかも知れません。冷却シートを貼ったからといって安心しないで、その後のケアをちゃんとしてあげて下さい。
・熱が続くと肺炎になる。
 熱が続くから肺炎になることはありません。もちろん肺炎だから、熱が続くのです。風邪などの原因となる細菌やウイルスの種類によって、病気の経過が規定されます。インフルエンザウイルスは、熱が続く重症なインフルエンザになるわけです。マイコプラズマは、感染すれば多くの場合肺炎を引き起こすことになります。
・熱が高いとひきつける。
 これはある意味では正しいことです。但し熱が上がれば、誰でもひきつけを起こすと考えることは誤解です。熱性痙攣の原因ははっきりわからないところがありますが、大体10人に1人の割で見られます。全く熱を出さない人は少ないので、一般にはこの程度の割合と考えて下さい。起こしやすさには、熱の高さ(上昇の度合い)、遺伝的素因、ウイルス(病気)の種類が関係すると言われています。お母さんや兄弟に痙攣の既往があり、急に熱が上がるときに起こると考えて下さい。起こってもいないのに心配するのでは不安ばかりつのるだけです。
 まだまだたくさんありますが、紙面の都合で今回はこの位にします。誤解はかえって子どもの症状を悪化させたり、お母さんたちに必要以上のストレス、心配を与えてしまいます。病気や対処法についての正しい知識を身に付け、子どもと共にお母さんも楽になる方法を考えてみましょう。
 この内容は、今秋東北放送の「すこやかさん こんにちわ」で小生が担当し、放映予定です。
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