かわむら こども クリニック NEWS  平成15年 7月号


学生実習について

 東北大学の医学部の学生さんが、クリニック実習に来ているのを知っていますか。今回は、この医学生の実習について書いてみます。
 突然ですが、先日、日本小児救急医学会に出席してきました。学会にはシンポジウムというのがあり、一つの話題に対して何人かで発表し、発表後会場の人たちとディスカッションするものです。今回は「小児救急医療と卒前卒後の教育」というテーマで、「卒前教育におけるクリニックの役割」を発表してきました。発表の要旨を簡単に説明します。「小児の救急医療に対しては、クリニック実習が直接的な貢献は出来ない。しかし、学生実習を通して小児医療への理解を深め、興味を持ってもらえれば、小児科を希望する学生が増えるかも知れない。小児科医が増える事により、小児救急医療に間接的に貢献できる可能性がある」と発表しました。御存じのように小児医療の問題がマスコミで、時々取り上げられています。取り上げられる度に、小児医療の危機が伝えられます。危機の理由のひとつは小児科医の不足で、実際には小児科医になろうとしている学生が年々減少しているのが現実です。また小児科医の過酷な労働と少子化などの将来への不安が強調されることも、小児科希望へ悪影響を与えているかもしれません。
 新聞を見ていると、読者の欄に時々医師に対する不満や不信の投書が載ります。「思いやりない診療に恐怖感」(河北新報)など、注意してみると結構多いものです。このような投書が全て事実とは限りませんが、患者さんがそのような思いを持ったという事実は確かです。医師と患者さんの間には、様々なギャップが存在します。インターネットの医療相談のアンケートでは、約半数の相談者は「説明してもらったが不安や心配が取れなかった」ことを相談の理由としていました。このようなギャップを少しでも少なくする方法は、コミュニケーションであるとことは確かです。近年、医学生教育でもコミュニケーションが重要視され、教育にも取り入れられるようになってきました。コミュニケーションを学ぶ教育方法としては、模擬診察などがあります。しかし、模擬患者さんの前での実習が、どれだけ効果があがるのかちょっと疑問です。
 当院の理念が、「お母さんの不安・心配の解消」である事を御存じだと思います。不安や心配の解消のためには、コミュニケーションが重要であり、そのための様々な試みを行っています。学生実習では医療におけるコミュニケーションの重要性や患者さんの気持ちを理解する大切さを伝えることが出来ればと思っています。自分を良い医師と言えるものではありませんが、医師というものを考えてみる一つのきっかけになればと思っています。医学生を受け入れているのは、必ずしも小児科医を増やす事だけが目的ではなく、医師として必要な何かを見てもらうことが大きな目的になっているのです。そしてクリニックでも、良い医師作りのためのお手伝いをしていることも知って欲しいことのひとつです。興味のある方は、ホームページの「学生実習」をご覧下さい。このコーナーでは学生実習の目的から始まり、実習の内容をムービーで見ることが出来ます。
 学生実習は、実は東北大学だけではありません。東北大学以外からも、是非このクリニックで実習したいという学生さんも受け入れています。このような実習の希望は、我々にとってとても有り難いことだと思っています。最後に学生実習に関してのお願いがあります。院長の診察後にもう一度診察させてもらったり、点滴などの介助をさせてもらったりしています。また1〜2ヶ月健診では、是非「抱っこ」を経験させてあげて下さい。「赤ちゃんは不思議です。抱っこすると思わず笑みが浮かびます。そんな不思議な力を赤ちゃんは持っているのです。」、そう説明しながら抱っこしてもらっています。これは学生さん達に非常に好評です。落としたりしないように充分な注意を払うつもりです。そばで見ていると心配かもしれませんが、学生さんの表情の動きも注意してみて下さい。一人の良い医師を育てるお手伝いということで、いろいろ御迷惑をおかけすることもありますがよろしく御協力をお願いします。そして出来れば、医師に対する期待、患者さんの思いを伝えるだけでなく、温かい言葉をかけてもらえれば幸いです。

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