かわむら こども クリニック NEWS  平成11年 7月号


少子化問題を考える

 先月予告したように、今回は少子化について考えてみたいと思います。
 先日厚生省から合計特殊出生率が発表されたので、改めて関心を持たれた人もいることでしょう。合計特殊出生率とは、いったい何でしょうか。これは、一人の女性が一生に産むこどもの数を示しているのです。単純に考えるとこの数が2.0で、初めて人口が維持されるのです(厳密には2.08といわれています)。ところが我が国の合計特殊出生率は、ずっと減り続け昨年には何と1.38まで低下しているのです。このままの状態が続けば、日本の人口は10年前後でピークとなり、あとは減っていくばかりなのです。
 では少子化が、将来的にどんな問題を引き起こすのでしょうか。人口が減少しても、お年寄りの割合は増え続けるのです。若い年齢層がお年寄りを支えるための負担が、どんどん重くなっていくのです。また国を支えるための労働人口が減ってしまい、国力を維持することが難しくなっていきます。他にも直接子供たちに対する影響が懸念されます。地域によっては同じ年代のこどもがいないということが起こりうることです。こどもは子供たち同士の関係の中や遊びを通して、様々なことを学んでいくのです。子供たち同士の関係の希薄化が、子供たちの性格や精神状態に悪影響を与えることも指摘されています。今やこれからの子供たちに対する、大きな負担や影響が心配されるのです。 どうして、こどもが増えなくなってしまったのでしょうか。原因は、結婚しなくなったことと、結婚してもこどもを産まなくなったことです。
 では、なぜ結婚しなくなったのでしょうか。これには様々な理由が、言われています。必要を感じない。自分の自由を失いたくない。仕事が生き甲斐になっている。つまり自分の現在の生活や時間の使い方に満足しているということになります。また結婚しなくて済むような便利な世の中になったことも関係しているでしょう。また女性から見て、男性が頼りにならないということもあるかも知れません。なるほどと頷いてしまうのは、小生だけではないと思います。
 なぜこどもを産まなくなったのでしょうか。これにも様々な理由が、言われています。お金がかかる。育児が大変。夫婦二人の楽しみを壊したくない。仕事がこどもよりも優先される。これには結婚しない理由と同じこと以外に、経済的問題と育児に伴う肉体的・精神的負担が理由としてあげられています。
 では少子化を食い止める方法はあるのでしょうか。結婚しなくなったことに対する対策というのは、なかなか難しいようです。自治体によって対策を立ているところもあるようですが、効果は上がっていないようです。自立できない男に対する不満もあるのでしょう。せいぜい小生の立場として言えることは、“男よしっかりしろよ!”程度しかないのかもしれません。こどもを産まないということに対する対策は、どうでしょう。厚生省も“エンゼルプラン”として、より安心して子育てができる環境作りに取り組んでいます。もちろん自治体として独自に対応しているところもありますが、両者ともなかなか効果は上がっていないようです。
 さて我々に、何かできることはあるのでしょうか。当院もCLINIC NEWS・ホームページ・お母さんクラブ、もちろん診察でも「お母さんの心配・不安の解消」を開業理念として、育児支援をしています。乳幼児医療費の助成やこども病院の設立にも協力してきました。しかし、これらはほんの小さなことなのです。実際に現実的な問題である金銭的なことや育児環境の整備は、行政に任せるしかありません。なにより大事なことは、「子どもっていいな・可愛いな」と感じることではないでしょうか。これは個人だけでなく、社会全体で感じて欲しいことなのです。初めての育児では、こう感じることは少ないかもしれません。子育ては、「つらいもの・苦しいもの」と思っているお母さんも多いはずです。2人3人と育てたお母さんたちは、「子どもっていいな・可愛いな」と思っているでしょう。初めての育児で悩んでいる人に、その楽しみを教えてあげてください。こどものいない人には、こどもの可愛さを教えてあげてください。
 少子化は、大変な未来なのです。その未来を変えるため何か少しでもできることが、あるかもしれません。今そんな積み重ねが、必要な時期ではないでしょうか。みんなで何ができるかを、この機会に考えてみてください。
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