かわむら こども クリニック NEWS  平成25年10月号


4年生の性教育が授業に

 昨年10月号に掲載した、小松島小学校「性教育親子PTA行事」が、今年度から授業に格上げされました。

 今から6年前2007年に、4年生の「新・みんなのほけん3・4年」、“育ちゆく体とわたし”を担任と一緒に授業を担当しました。校内研究授業で、校長始め、学年主任から高く評価され、全クラスの授業を依頼されました。忙しさを理由に断わりましたが、PTA役員の強い熱意に押し切られた形で、2008年から親子PTA行事「親子で学ぼう『いのちのつながり』」として継続しています。

 さて今年はと考えていたところ、3月に校長から「PTA行事は、毎年その年度ごとに内容が違います。川村先生の「いのち」「性教育」は、4学年児童の学習にとても有効であり、毎年必ず聞かせたい講話です。そこで、体育(保健)の教科の時間に設定し、今までと同様に保護者と一緒に学習することによって家庭内でも「いのち」、「性」に向き合う素地を作り上げたいと考えたため、授業として扱うこととしました。」と伝えられました。

  確かに、PTA行事は同じテーマで継続されるとは限りません。担当者の意識が違えば、ある日突然消滅してしまうかもしれません。6年間も続けてきたことが、突然中止となることはとても残念なことです。当院は開業以来、『お母さんの不安・心配の解消』の理念を掲げて、様々な活動に取り組み、学校医活動もその一つです。取り組む姿勢として、常に「継続は力なり」を座右の銘にしています。そんな時に、校長から“児童の学習にとても有効であり、毎年必ず聞かせたい講話です。”と校長の理解を得たことが、どれだけうれしかったかは想像してください。

  授業は、9月19日(木) 5〜6校時に、特別活動室で4学年の児童と保護者の参加(教職員・教育委員会含120名)で開催しました。内容は従来のPTA行事と同様で、5校時目は保護者同席での、命の大切さを伝える「赤ちゃんはどこからくるの」、6校時は保護者対象の講話です。保護者対象の講話では、事前に質問を受け、その質問の解説から話を広げていきました。今年の役員は熱心で、事前に、風疹、帯状疱疹、夜尿症、子宮頸がん予防ワクチン等の質問が寄せられました。

  「赤ちゃんはどこからくるの」の詳細は、CLINIC NEWS(2012年10月号)、ブログ「こどもクリニック四方山話」をご覧ください。

  保護者への講話では、PTA役員の熱意と、“先生の生い立ちを話してください”とのリクエストから、新たにスライドを作って臨みました。誕生の頃の写真、研修医時代のパンチパーマ姿は、大きな笑いが渦巻く始まりとなりました。続いて、質問の一つ一つを紹介し、解説する流れとなりました。そして、クライマックスは「命の大切さ」を伝えることの意義です。「ある悲しい出来事」として、日齢4新生児死亡搬入のケースを紹介しました。19歳独身女性が、自宅アパートで独りで出産し、次第に弱々しくなっていく赤ちゃんのそばで何もできずに過ごし、4日目に死亡した赤ちゃんを抱っこして連れて来たというものです。この悲劇から、問題点を浮き彫りにして、「人の命とは」、「命の大切さとは」を、改めて考えるための場としました。身近な現実だけに、お母さんたちに与えた衝撃はかなり大きいものだったようで、あちこちからすすり泣く声が聞こえてきました。開業医に死亡新生児が搬入されることは、極めてまれです。目に見えない大きな力が働き、辛い経験を与え、命の大切さを伝導する使命を与えられたのでしょう。新生児医療では、生後間もなく亡くなる赤ちゃんは珍しくはありません。そんな赤ちゃんが生まれてきて死ぬことの意味をいつも考えていました。その意味を考えることが、この世に生を受けた命に対しての我々大人たちの役割です。

  最後に、参加した母親の感想を紹介します。「子供と一緒に、いのちについて(性について)のお話をうかがうのは、はずかしいかと最初は思ったのですが、先生がわかりやすく、楽しくお話ししてくださったので、子供たちも照れることなく真剣に聞いていたのがとてもよかったです。保護者のみのお話では、赤ちゃんの死がやはりショックでしたが、命について考えられてよかったと思います。ありがとうございました。」、「家庭の中から、幼少のうちから、命の大切さを話題にしたり、教えたりすることは大切な性教育だと私も思います。子供はまっすぐに話すとまっすぐに受け止めてくれます。性を考えることは命を考えること。自尊と他尊の心を育むことでいじめや差別が少しでもなくなることを信じています。」

  授業は、性教育といいながら、「命の大切さ」がメインテーマです。「命の大切さ」を伝えることは、自分自身だけでなく、他人のことも考えることにもつながります。親子揃って聞いてもらうことは、話しにくい性教育の話題が食卓に上り、親と子のかかわり合いの大切さを考えるきっかけになればと思います。このような小学生に対する活動が広がり、虐待やいじめ防止につながることを願って止みません。

性教育二部、保護者への講話 講話での、まじめな院長の姿 PTAからの感謝の花束贈呈でうれしそう

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