昨年から全国的に風疹の大流行が続いていることは、ニュースなどでご存知のことと思います。
昨年の風疹報告数は2353例(国立感染症研究所)となり、過去5年間で最も多く、今年になってもさらに患者数は増加し3月末までに昨年の報告数上回るような、かつてない大流行の様相を呈しています。従来の流行は子どもが中心でしたが、最近の統計では7割以上は男性で、うち20代~40代が8割を占めています。成人男性の罹患が増えている理由には、1994年以前は対象者が中学生女子に限られていたこと、25~33歳の男性は制度移行期で接種率が低かったことも関係しています。平成23年度の感染症流行予測調査によると、30代から50代前半の男性の5人に1人は風疹の免疫を持っていず、20代の男性は10人に1人は免疫を持っていませんでした。
それでは、風疹とはどんな病気で、何が問題なのでしょう。風疹の原因は風疹ウイルスで、幼稚園児や小学生を中心にかかります。潜伏期は2〜3週間とされ、不規則な間隔で局地的に流行しやすく、春から夏のはじめに多くみられます。せきやくしゃみによる飛沫と接触で感染しますが、麻疹や水痘ほど伝染する力は強くありません。かかったのに症状が出ない場合(不顕性感染)が20〜40%と多いのが一つの特徴です。 症状は、発熱、発疹とリンパ節腫脹(耳介後部、後頭部、頚部)が三兆候です。発疹は、バラ紅色で小さく、一つ一つが孤立していて、一見きれいですが、かゆみがあるのが特徴です。顔面から出はじめて、体、手足へと広がりますが3日ほどで消えてしまいます。麻しんに似ていますが比較的症状が軽いため、「三日はしか」とも呼ばれています。リンパ節のはれは、わりと大きく、押すと痛み(圧痛)があります。発熱は、約半数にみられ、2〜3日で下がります。そのほか、結膜の充血、のどの痛み、せき、頭痛など、かぜに似た症状がみられることがあります。大人が風疹にかかると、発熱や発疹の期間が子どもに比べて長く、関節痛がひどくなることがあります。
合併症には、意識の変化やけいれんをともなう髄膜脳炎(5000人に1人)や出血斑、歯ぐき、鼻などから出血がみられる血小板減少性紫斑病(3000人に1人)があります。
典型的な場合は比較的診断は容易ですが、とくに流行期以外での非典型的な例では診断がむずかしく、小児科医泣かせの病気の一つです。過去の女子中学生のワクチン接種時の研究では、“罹患した”の半分は抗体価の上昇が無く(罹患していない)、“罹患していない”の半分で抗体価が上昇(罹患していた)というデータがあります。その意味は、症状だけでの診断が非常に難しく、確定のためには抗体価の測定が必要ということになります。
症状が比較的軽い風疹ですが、大きな問題は「先天性風疹症候群」です。妊娠初期の女性が風疹にかかると、胎児が風疹ウイルスに感染し、難聴、心疾患、白内障、そして精神や身体の発達の遅れ等の障がいをもった赤ちゃんがうまれる可能性があります。これらの障がいを「先天性風疹症候群」と呼びます。残念ながら、この病気に対する治療はないため、親御さんもお子さんも、生涯にわたる大きな負担を背負うことになります。風疹にかかった妊娠時期により違いがあります。報告によってまちまちですが、特に妊娠12週までにかかった場合、その可能性が高い(25〜90%)ことが示されています。
しばらくの間、ほとんどみられない時期もありましたが、近年風疹の増加に伴い昨年10月以降3月末までに8人の「先天性風疹症候群」が報告され大きな社会問題になっています。
感染者が増えれば、当然のことながら先天性風疹症候群も増えてしまうのです。「先天性風疹症候群」から子ども守るためには、子どもたちはもちろんのこと、女性だけでなく、とくに30~40代の男性のワクチン未接種者及びかかっていない人、かかったどうかわからない場合も是非ワクチンを受けてください。
現在子どもたちでは、MR(麻しん・風しん)ワクチンの2回接種を行っています。風疹の罹患やワクチン接種を受けた場合でも、新しく接種することには何ら問題はありません。ワクチンは自分自身だけでなく、家族や社会を守ることも目的のひとつであり、予防接種を受けること(受けさせること)は、大人としての努めと考えましょう。お父さん、一歩前に踏み出して風疹ワクチンを受けましょう。
先天性風疹症候群-1 |
先天性風疹症候群-2 |
風疹ワクチン接種 |
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・今、風疹が危ない(CLINIC NEWS 2004.5月号)
・風しんについて(厚生労働省)