かわむら こども クリニック NEWS  平成13年9月号


小児科が危ない!

 最近、新聞やテレビで、小児医療についてよく報道されていることを御存知ですか。8月24日の河北新報では、『小児科受難』の題で、相次ぐ休診、窓口廃止・東北の病院という副題が付き掲載されていました。築館町の公立築館病院では、退職する小児科医の後任が決まらず、休診しています。大学病院の小児科に医師派遣を要請しましたが、めどが立たない情況です。テレビでも小児科医が足りないなどの特集が組まれ、小生が見ただけでもニュースステーション、EZ!TVなどがありました。
 東京都の統計では開業小児科医の平均年齢が、他の科と比べて10歳近く高くなっているのです。つまり小児科医になる医師の数が、少ないことを物語っています。その理由に小児科医の激務があると思われています。テレビなどでも御存知のように、救命救急センターでの小児科医の忙しさ(激務)が報道されています。確かに小生も新生児医療に従事していたときには、2〜3日も病院に泊まりっぱなしということも、珍しくはありませんでした。ある意味では、小児医療は個人的犠牲の上に成り立っているのかもしれません。また小児医療には人手が、かかります。点滴するのも採血するのも、看護婦さん一人だけでは、なかなか困難です。人手がかかる割に、診療報酬(医療費の収入)が少ないのが小児科です。そのため病院での小児科の閉鎖が、後を絶ちません。東北地方でも2年間に20もの病院の小児科が閉鎖されています。幸い仙台市内の病院では、小児医療に対する理解が深いため閉鎖されるような病院はほとんどありません。小児科は現状では地域医療と考え、住民に対するサービスの一つと考えなければ運営していけないのかもしれません。そのような医療環境の中で、将来に対する不安も大きいためか小児科医を志す医学生が少なくなっているのも事実です。それに拍車をかけているのが、少子高齢化です。少子化が進むことは、小児医療の環境を益々悪くする要因となるでしょう。
 さて「かわむらこどもクリニック」のような、開業医ではどうなのでしょうか。東京などの中心部では、大都市の過疎化や少子化の影響がありますが、現在のところ、あまり大きな影響はありません。核家族化や周囲とのつながりの希薄さなどにり、母親達は孤立しています。またこども育てにくい社会環境により一人のこどもに対しての思い入れが強くなってきています。孤立化と一人っ子のため病気に対する不安や心配も強くなり、むしろ開業医では混雑することが問題になっています。これも小児科医が少ないことの現れです。
 小生がインターネットでの医療相談を全国から受けていることは、御存知でしょう。なぜ見ず知らずの医師に、相談をするのでしょう。先日相談者に対して、アンケート調査を行いました。他の医師に相談をした理由(図)では、「説明してもらったが不安がとれなかった」が49.3%で最も多く、以下「説明も理解も出来たが他の医師の意見を聞きたかった」26.4%、「聞きたくても話してくれなかった」12.2%、説明してくれなかった」6.1%、「説明してもらったがわからなかった」6.4%の順でした。小児医療に対する意見や要望と合わせて判断すると、やはり小児科医が少ないということに行き着きます。医療機関が少ないため混雑し、医師からの説明を充分に受けられないことが医療相談を求める理由になっていました。
 さて、解決法はあるのでしょうか。このままでは、ますます小児医療の環境が悪くなります。まずは小児科医を増やすことを考えなければなりません。診察の時、医学部の学生さんに出くわしたことがあるかもしれません。当院では東北大学の小児科の学生実習を受け入れています。学生さんに小児医療を理解してもらうだけでなく、患者さんとクリニックのコミュニケーションを通して心配や不安の解消の大切さに気付いてもらえればと思っています。
 今回は、小児医療の問題点を考えてみました。ただ問題を羅列しただけで、終わってしまった感があります。このような問題があるということを、知ってもらえればいいと思います。小児科医を増やすことなどの、根本的な問題は開業医一人では出来ないことです。しかし目の前にある小児医療の問題に対して、「不安・心配の解消」と「コミュニケーション」は、解決のためのキーワードの一つになるでしょう。
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