かわむら こども クリニック NEWS 平成12年 3月号
外来で気付いたこと−8
久しぶりに、外来で気付いたことを書いてみます。
発熱と咳で受診して38℃以上もあるのに、「お風呂に入れていいですか」と聞かれることがあります。こんな時、なぜ聞かれるのか不思議に思います。日本の従来の習慣では、熱がある時はお風呂を控えるというのは常識です。これは子供の時から親に言われているので、誰でも知っていることでしょう。しかし風呂に入れていいのかと聞くということは、今まで教えられてこなかったのでしょうか。そんなことはないと思います。このようなことはいつの時代でも大切なことで、これからもずっと伝えていくことなのだと思っています。ではなぜ聞くのでしょうか。おそらく病気に対する対応と、風呂に入ることの大切さを計りにかけることができないのかもしれません。病気で風呂に入れないことも、清潔を保つために風呂に入れることも大切です。普通はどちらを優先すべきかは、わかっているはずです。このように実際の生活の重要性に優先順位をつけることが、今の若い人には苦手かもしれません。同じようなことは、他の場合にも感じられます。下痢がひどいと受診しながら、牛乳を飲ませているのも同じことなのです。こんな時「お母さんは下痢の時、牛乳を飲みますか」と聞くと、ほとんどの人は飲まないと答えます。また同じ疑問ですが、ではなぜ子どもには飲ませるのでしょう。これも計りにかけるが苦手ということで、いいのでしょうか。
しかしもう一つ関係していることがあると思います。どうしてという問いの答えに、「子どもが風呂に入りたがるから」、「牛乳を飲みたがるから」と言うお母さんもいます。確かに子どもは病気という意識が薄ければ、風呂にも入りたがるし牛乳を飲みたがるのも仕方ありません。年齢も関係しますが、病気を理解させることも難しい場合もあります。しかし病気の時やしつけの場合には、子どものわがままを通さないことが大切なことなのです。
もちろん他にも大切なことがあります。それは親が常識を身に付けるということです。以前にインターネットの医療相談に、「はじめまして。一般に市販されている60度保温のポットのお湯でミルクを作り、そのまま飲ませていますが、熱すぎるでしょうか。一月末に生まれて以来二カ月間その状態で飲ませています。今更ですが、大丈夫でしょうか。本人は特に機嫌が悪くなることもなく、一カ月検診でも順調に育っていると言われました。よろしくお願いします。」がありました。この相談の場合にもどうしてと言う疑問が、最初に沸き上がってきたことはいうまでもありません。誰でもミルクを作れば、飲み頃の温度まで冷やすというのが常識です。この常識が、なぜわからないのでしょうか。
今マニュアル人間という言葉があり、マニュアル通りというのがいけない風潮です。しかし、これは常識的な考えができる人たちには当てはまることだと思います。何から何までマニュアルどうりにやらなければならないということはありません。やはりわからなければ、マニュアルを読むことも必要だと思います。最低限の部分はマニュアルを読んで欲しいと思います。それを自分で理解し、また判断して、初めて自分のやり方が見つけられるのです。
これを読んでるお母さんたちは、皆さん常識人でしょう。でも思い当たる人は、この記事を読んで、何が大切かということを考えてみましょう。
クリニック NEWS コーナーに戻る