かわむら こども クリニック NEWS  平成11年 2月号


外来で気づいたこと−7

−薬の投与期間について−

 久しぶりに、“外来で気付いたこと7”として、最近感じたことを書いてみます。
ここのところ薬を長く出して欲しいと言われることが多くなりました。また前回は長くもらえたのに、今回はもらえなかったという苦情がありました。確かにお母さん方も仕事で忙しいし風邪も流行っているし、病院には何度も来れないし来たくないと思うのかもしれません。当院での薬の処方日数は、だいたい3〜4日です。小児科でももっと長くもらえるところもあれば、2日というところもあります。
 いったい病院ではどんな基準で、薬の日数を決めているのでしょう。まずは症状と曜日です。この関係なさそうなことが、実は関係があるのです。例えば発熱がある場合には、基本的には3日間と決めています。風邪などで2〜3日続くことはよくあること、またそれ以上続く場合には肺炎や外の病気の可能性も出てくるのです。また薬の効果の判定には2日程度必要なのです。つまり病気の程度の判断と薬の効果の判断のため、3日間という答えが出てくるのです。医学的には直接関係がありませんが、曜日も一つの要件になります。木曜日午後と日曜日の休診を考えると、本来は休みが間に入るので2日分と言う答えも出てきます。木曜日の午後では保育園に行っている子は連れてくることができません。また2日というのはほんとにすぐです、そこでお母さん達を信頼し便宜を考えて4日分出すことがほとんどなのです。熱が下がらない咳や嘔吐が止まらないなど特別な状況の場合には、1〜2日分ということもあります。逆に慢性的な症状で軽症な場合には、5〜7日間処方することもあります。
 しかしここで考えてもらいたいことは、誰のための薬なのかということです。薬はこども達のためであって、お母さん達のためではないのです。子供は急性期の病気がほとんどで、良くなるのも早いかわりに悪くなるのも早いものです。その悪くなるのを防ぐためには、経過の観察が必要なのです。ほとんどのお母さんは、ちゃんと子供状況に目を配り、悪くなれば早めに連れてくるでしょう。しかし親の勝手な都合で薬を長く出したために、遅れて重症になって苦しい思いをして連れてこられる子もいるのです。そんな子供は誰が守ってあげればいいのでしょうか。これを読んでいるお母さんは、私に限ってと思うでしょう。でも誰が子供に気を配るお母さんで、誰が気を配らないお母さんなのか、判断は難しいところです。ですから病院の立場としては、一定の基準で投薬日数を決めるしかないのです。
 熱が高かったり気管支炎でぜーぜーしている子供を前にして、「仕事が忙しく病院に来れないので薬を長く出して欲しい」と言われて、「はいはい、どうぞ」と答えるわけにはいかないのです。前回と今回は症状が違うので、薬の日数が変わるのも仕方ありません。小生も人間ですから、どうしてもと言う場合には長く出してあげています。ただ理由もなく「薬を長く出して欲しい」ではなく、ちゃんと理由をつけてもらえればと思います。
 薬の日数を患者さんが要求するのは、身勝手なことだと思います。レストランに行って料理の量が少ないから、量を増やすような要求はしないはずです。でもこちらもなるべくお母さんの都合は、病気の次に考えてあげたいと思います。基準をこちらが変えるわけですから、ちゃんと礼儀を守って言ってもらえるとありがたいと思っています。こんなことも感じながら、診療しているということも知っていて下さい。この新聞をいつも読んでもらっているお母さん達には関係ない記事かもしれませんが、悪しからず!!

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