かわむら こども クリニック NEWS  平成8年12月号


外来で気づいたこと−

5

 今回は、外来で気付いたこと(5)として、最近気になったことを書いてみます。
 よく「先生のどが赤いですか」と聞かれます。のどが赤いというのはどんなことなのでしょうか?のどが赤くなる病気の代表は風邪です。風邪の中でも咽頭炎や扁桃炎で赤くなることが多いのです。この場合は熱を伴い、大人ではのどの痛みを訴えます。ポリオの予防接種で、一度に100人以上の赤ちゃんを見ていると症状がなくても、のどの赤い子はいます。その場合にのどが赤いからといって、元気で症状もない子の接種を中止するわけには行きません。熱があっても腸炎や肺炎の場合は、のどの赤みはありません。しかしお母さん達は、鼻水だけや下痢をして熱があるときも聞いてきます。どうしてそう思うのでしょうか?これには医師の責任もあるのかもしれません。小生はなるべくのどが赤いという言葉を使わないようにしています。明らかな咽頭炎や扁桃炎以外にはです。しかし昔から医師においても「のどが赤い」は決まり文句でした。「のどが赤い」というと言われることで安心していたのかもしれません。
 同じような言葉に「のどが腫れている」というものもあります。のどが腫れるという言葉はいったいどこが腫れることを言うのでしょうか。扁桃炎で扁桃が腫れることはあります。しかし扁桃というのは大きさには個人差があります。扁桃は赤ちゃんの時には小さく、次第に大きくなり小学校の高学年でもっとも大きくなり、大人になるにつれてまた小さくなります。「のどが腫れている」も決まり文句で、言われると納得していたかもしれません。しかしのどの赤さや扁桃の大きさにも個人差があります。色や大きさを覚えていなければ、本当は異常かどうかの区別は出来ません。しかしかかりつけの子供全員を覚えることは不可能です。のどの赤いことや腫れていることは、大きな問題ではありません。もう少し医学に忠実に考えることも大切かもしれません。
 もう一つ「お風呂の入ると赤い湿疹がたくさん出てきます」という言葉をよく聞きます。そういう子をよく見ると皮膚に薄い湿疹が見られます。どう考えたらいいのでしょうか。確かに冬になると皮膚が乾燥して、湿疹が出ることが多くなります。軽く治療が必要ない湿疹も、お風呂に入って血の巡りが良くなるとすっかり目立ってしまいます。話は変わりますが、ほっぺの赤い子も赤くない子もいます。それをお風呂に入って赤くなって色を比べる必要もないし、そのばかばかしさも皆さんはおわかりでしょう。評価は普通のときにすればいいのです。わざわざ風呂に入って、赤くなるのを心配する必要はありません。
 前にも書いたかも知れませんが、肺炎についての誤解をひとつ。肺炎で入院したという話をよく聞きます。確かに肺炎は思い病気のひとつに数えられています。しかし肺炎にも色々な程度があることも事実です。熱が長く続き咳がひどい場合は、肺炎を疑います。肺に少し影があるため肺炎と診断しますが、検査では心配ない場合も多いものです。中には、毎日3日間も点滴して治す場合もあります。10人肺炎の子どもがいて、入院の必要なこどもはせいぜい1人ぐらいです。そんなに心配しなくていい場合も多いのです。肺炎という言葉にあまり恐怖心を抱かないようにしましょう。
 医学の色々な部分で誤解されているものがあります。少し医学というものを客観的に見る必要もあるようです。

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