かわむら こども クリニック NEWS  平成8年8月号


外来で気づいたこと−4

 最近、外来で感じたことを、また書いてみます。
 混雑は一段落しましたが、夏風邪が流行っています。夏になると決まって聞かれることの一つに、扇風機やエアコンがあります。「風邪の時に、扇風機(エアコン)をかけてもいいでしょうか」です。どうも扇風機やエアコンは、病気にとっては悪者扱いのようです。しかしよく考えてみましょう。病気の時には、ただでさえ具合が悪いのです。具合が悪ければ、過ごしやすい環境にしてあげるのが親の役目です。病院では、高熱(特別な場合ですが)で他の方法がないときには、体にアルコールを塗って扇風機で冷やすこともあるのです。もちろん真似はしないでください。場合によっては高熱でも扇風機をかけることがあるのを知っておいてください。さて、熱があって具合が悪くて“フーフー”言っているときに、扇風機やエアコンが悪いといって、サウナのような環境で過ごすのが正しいのでしょうか。やはり暑ければ冷やしてあげるのが原則です。熱の話でも以前書いたように、急に熱が上がって寒気がするときには暖めて、熱が持続するときには冷やしてあげてください。しかし、限度があります。冷やし過ぎはよくありません。クーラーや扇風機の風が長時間直接当たらないようにとか夜間は、タイマーなどを利用して冷え過ぎないよう注意し、大人が少し暑いかなという程度にコントロールしてあげましょう。
 熱があると食欲がないと心配するお母さんも多いのですが、どうでしょう。まずは自分のことを考えてみましょう。大人が風邪をひいたり熱があって食欲がないときには自分で納得して、食べずに水分補給を考えます。子供も同じです。熱があれば食欲がないのは当たり前です。食欲がないときに、無理矢理食べさせる必要はないのです。外来でもよく言うのですが、「大人が食欲が無い時に、優しい誰かが風邪の時には栄養が必要と言ってどんぶり飯を差し出せば、きっと心の中でこのヤローと思うはずです。」それと同じことをお母さんたちは、子供にしているのです。お母さんたちの役割は、無理矢理食べさせることではありません。食欲のない子供に対して、バランスを考えながら水分を補給してあげることが、お母さん達の役目なのです。水分の補給の時期、栄養を考える時期を区別して考えましょう。
 暑くなると、食欲が落ちるのは当たり前です。これも同じに考えてください。自分は食欲がないのに、子供にだけ食欲を期待するのは、大人のわがままです。食欲がないときに食べたくない食事を出され食べられないと水分でもいいからと言って、ジュース・牛乳・お菓子を与えてしまいます。ジュースや牛乳を飲むから、次の食事が食べられない。そんな悪循環を作っていませんか?。お母さんの心配は、よくわかります。余りにも一度の食事に重きを置いてしまっています。今暑くて食べられないのなら軽くして、次が食べられればいいと考えてみませんか。食事は、一日のトータルと考えてあげてください。食べないと言って、他のものに走ってしまうのは、食べない原因を大人が作っているのです。
 今回の言いたかったのは、大人の勝手さです。子供の状況や状態をみきわめるのが、大人の仕事です。子供の意志や個性を尊重して、その子にあった正しい対応の仕方を考えてあげましょう。

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