かわむら こども クリニック NEWS 平成6年1月号
外来で気付いたこと−3
久しぶりに、“外来で気付いたこと3”として、最近感じたことを書いてみます。
5月に入ってから、咳の止らない風邪がはやり、喘息のこどもも多く見られています。時々、優しいはず(?)の僕が、怒ってしまうことがあります。心当りのお母さんもいるはずです。一体どんなことが原因なのでしょうか。
普通の風邪の時には、いつ連れて来なさいと言わないようにしています。理由は、治って診せに来て、別の風邪がうつっては困るからです。しかし喘息や気管支炎や熱が続く場合は、お薬が無くなる前に連れてきなさいと言って帰します。それを一度ならず二度までも守らず、病気の悪化を繰り返す場合は、怒ってしまいます。それは何故でしょう?。こどもが話を聞いて、その日に来るわけはないのです。お母さんしかできないのですが、良くなったというお母さんの勝手な判断や都合で、受診しない事にしてしまいます。一度目は注意だけですが、二度目となると怒ってしまいます。こどもがかわいそうになるのです。本来、こどもを守るべき親が守ってやらなければ、誰が守るのでしょうか。病気に関しては、それがぼくたち開業医の責任であり仕事です。先に書いたように、どんな時でもつれて来いと言いません。そう言うのはこちらが、心配している時なのです。お互いの信頼のためにも約束は、守るように心掛けましょう。
また最近、薬の処方日数のことも考えてしまいます。当院では一般に3(〜4)日間の薬の処方をしています。はたしてこれは、長いのでしょうか短いのでしょうか。総合病院ではもっと長いかも知れませんが、開業医では2日の所も多いようです(場合によっては1日だけのこともあるようです)。こどもの病気のほとんどは急性疾患で、症状の変化も大人と比べると急激です。医院の立場や責任としては、病気の状況の把握や対応のために、お薬の処方は2日が適当だと考えています。しかし2日の処方では、1日おきに来院しなければなりません。それでは、お母さん方も大変です。そんな理由で、お母さんたちを信じて処方を3日としているのです。しかしこれが逆効果のことが多くなりはじめています。というのは、悪くなっても、薬を飲んでる安心感から、飲み終わるまで連れてこないことがあるのです。そんなことが多くなれば、薬の処方を短くするしかありません。それでは、困る人や困る場合が多くなってしまいます。
今回の二つの出来事は、全て信頼に関係するものです。お互い信頼しなければ、良い医療もできず、病気の治癒も遅くなります。それで被害をこうむるのが、大人たちであれば仕方ありません。でも、こども達なのです。
今回の記事を機会に、信頼ということについて考えてみましょう。
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