かわむら こども クリニック NEWS  平成6年12月号


外来で気付いたこと−2

 今回は、外来で気付いたこと2として、よく聞かれることについてまた話してみましょう。  マスコミや週刊誌のせいでしょうか?。包茎を気にするお母さんたちが多いようです。多くは、とりこし苦労で、ほとんどは心配がありません。ほかのお母さんに「お宅の○○ちゃん、包茎じゃなーい?」と言われたり、本で読んだりしたことが不安の原因のようです。特に乳児期や幼児期では、剥けなくても問題なく、思春期までには剥けてしまいます。排尿時に、包皮(オチンチンを包んでいる皮)が膨れたり、何度も包皮亀頭炎(先端が赤くなって、膿がでたりします)を繰り返したりしなければ、手術の必要はありません。余り心配なら、小さいころどうだったかとご主人に聞いてみるのも一つの手かもしれません。
 冬になると、皮膚がかさかさしてきます。これもお母さんたちの心配の種で、アトピー性皮膚炎ではないかと思ってしまいます。多くは、ほかのお母さんに「アトピーの子は、冬になると、かさかさしてくるのよ」「かさかさする子は、アトピーなのよ」と言われ、心配になってしまいます。以前にも書きましたが、アトピー性皮膚炎には多くの誤解があるのです。アトピー性皮膚炎が、なぜ問題になるのか、ここでもう一度考えてみましょう。皮膚がかさかさしたり、湿疹があるだけなら、こんなに大きな問題にはならないはずです。では、どうしてなのでしょう。アトピー性皮膚炎の診断基準というのは、御存知でしょうか。無くてはならない条件に、痒みがあります。痒みが無ければ、アトピー性皮膚炎を考えなくてもいいくらいです。痒みがひどくて掻き傷が絶えない、痒くて眠れない、掻いて掻いて血だらけになってしまう、痒みの為にに集中できない。夜眠れないために精神的に不安定になったり、授業に集中できず成績が落ちてしまうなども起こってくるかも知れません。しかし、多くの場合は、皮膚に赤い湿疹ができただけで、アトピー性皮膚炎を考えてしまいます。一つの原因は医師にもあるかも知れません。面倒臭いのか、簡単にアトピーという診断を口にだしてし、そして検査もしたがるはずです。当然アトピーを心配しているお母さんたちは、診断を受けて安心します(病気に対する安心ではなく、思っていたことが当たったという安心です、誤解のないように)。しかし病気は、診断が目的ではなく、治療が目的なのです。アトピー性皮膚炎と診断すれば、余計に深い闇の中に迷い込んでいくことになるかも知れません。余計な苦労は、しょわないに越したことはありません。病気を理解し、充分な根拠のもとで、診断したいものです。診察でも話しますが、お母さんたちの手、やはり冬になるとかさかさするのは当たり前、心配なら半ズボンで歩いているこどもの足を見せてもらってください、かさかさの足を見て、きっと安心することでしょう。
 また取り留めのないことを書いてしまいましたが、包茎もアトピー性皮膚炎も、もちろんお母さんたちにとっては大きな問題です。他の病気についても同じですが、母親の義務として、病気の本体をよく理解するよう努めてください。
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