かわむら こども クリニック NEWS  平成5年6月号


創刊に際して《開業の思想》

はじめに
 当院が開業して、ようやく3カ月がたちました。少しづつ患者さんの数も増え、少しは地域医療に貢献を始めたかと考えています。小児科開業に当っては、時々診察室で、お母さん達にも話しているように、”母親の心配、不安を如何に取り除いてあげる”かということが、子供達の病気を治療することと、同じくらい大切だと思っています。そのためには、病院側とお母さん達とのコミュニケーションを確立していくことが大切と考えています。
 その方法として、今回から“こども クリニック NEWS”を定期的に発行し、少しでもコミュニケーションを作っていくのに役立てていきたいと思っています。
今回は、当院の開業に対する考え方、スタッフの紹介等を中心に、テーマをきめて、医学的な面での役立つことを記事にしていきます。

親しみやすさ

 こども達にとって、病院というものは決して好ましい存在ではありません。むりやり裸にされ、のどを見られ、注射や点滴をされるいやなところです。こども達が一度拒絶反応を示すと、病院へ行くというだけで、駄々をこね、挙げ句のはてには、寝ころんだまま動かなくなってしまいます。そうなるとお母さん達には、大変なことです。少しでも、こども達に、なれ親しんでもらうため、なるべく明るく、親しみやすい外観、内装にしました。
 待ち時間を過ごすために、待合室に大型テレビを設置し、こども達がおとなしく、また安心して待っていることができるようにしました。待合室のカーペット部分には、床暖房がしてあります。

お母さん達の心配、不安の解消

 当院院長は、長い間にわたり特に未熟児、新生児を専門としてきました。その医療を通して学んだことの最も大切なことは、冒頭にも述べましたように母親の心配、不安をとってあげることです。未熟児を産んだお母さんに対しては、その子の治療(例えば呼吸を助けるため、気管にくだを入れることや、器械で呼吸を助けること、点滴をすること)と同じくらい、その子を目の前にして、悩み苦しんでいる母親に、手を差しのべてあげることが必要です。
 お母さんの安心のもとでこども達が育つことが、とても大切です。神経質すぎるお母さんには神経質なこども、大雑把すぎるお母さんには大雑把な子供が育っていきます。
 病院にくるこどもの半分以上は、お母さんの心配で連れてこられています。そのため、お母さんの心配、不安をよくきいてあげるよう心がけていくつもりです。
 お母さん方の最も大きい不安は始めてのこどもを持ったときです。やれ、くしゃみをする、吐く、湿疹ができた、ミルクをのまない、離乳食が進まない等様々です。さて子供が二人目ともなると、不思議なくらい心配事が少なくなります。この乳児期の心配を少しでも解消するために、栄養士の栄養育児指導の時間を、診療時間とは別に設けています。
 赤ちゃんのいるお母さん達に、人目を気にせず、安心しておむつ交換や、授乳ができるようにするため、授乳室も別室として設けてあります。これも母さん達に対するサービスのつもりです。ほかには冬寒いとき手を洗う時に、少しでも手が、暖かいよう授乳室、トイレには給湯を行っています。
 このようなことを通してお母さん達にも、安心でき、入りやすい病院を目指しています。
 サービス(言葉としては余りよい表現ではありませんが)についてもう一つ。当院は、木曜日を午後休診として土曜日は全日診療をしています。公的病院が週休二日制となり、土曜日を休みとしています。また働くお母さんが増え、土曜日の来院が都合よい場合が多いようです。(父親週休二日制で足もありますし!)土曜日全日診療もサービスの一つと考えています。(やむを得ない場合には土曜日の検診予防接種も可能です)
 夜間及び休日も可能な限り、急患は診るつもりです。翌日の診療への影響も考えて、9〜10時ごろまでとしていますが、会議等で対応できないときは、石名坂の急病診療所等をご利用ください。

院内交差感染の防止

 病院には様々な病気のこども達が来ます。お母さん方にとっても、病気の治療で病院に来ても、ほかの病気にうつることは決して好ましいことではありません。神経質なお母さんでは、待合室ではなく、車の中で順番を待つこともあるようです。私たち小児科医にとっても、院内で流行性の病気に感染することは、好ましくはありません。
 当院では、診察室とは別に隔離室を準備し、院内感染を防ぐ努力をしています。隔離室を準備している医院はあります。当院では、より完全をきすためトイレも隔離室にあります。トイレに行くのに、待合室を通れば意味がなくなります。
 また検診と予防接種を診療時間と区別していますが、これも同様の目的のためです。検診と予防接種は健康なこどもが受けるものです。検診や予防接種に来たのに病気がうつってしまうことは避けなければなりません。その時間に急患が来た場合にも、隔離室を利用します。
 こんな理念のもとで、今後診療に当たっていくつもりです。
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