かわむら こども クリニック NEWS  平成11年 8月号


熱中症

 今年は例年になく暑い日が続いています。7月31日で、仙台で10日も真夏日が続いています。先日青森や秋田では、気温が37度にも達したようです。またコンサート会場で多数の人が倒れたと、ニュースで流れていました。また熱中症による救急車の出動が、今年は異常に多いと新聞で報道されていました。
 熱中症という言葉を、聞いたことがありますか。ちょっと難しい話になりますが、高温の環境下で体温の調節がうまくいかなくなった状態が、熱中症とか熱性障害です。また、特に症状が重い状態を熱射病熱射病と呼んでいます。しかしこの言葉自体あいまいなため、いろいろと混同されているようです。原因としては高温の環境であること、また湿度が高い環境、水分の摂取量、運動や労働なども関係しています。初期症状としては、体温の上昇はありませんが元気がなくなり下肢にけいれん(こむら返り)などが見られるのが熱痙攣で、もう少し症状が進むと嘔吐、頭痛や脱水症状が見られ、熱疲労と呼ぶこともあります。ある限界を超えて重症になった場合が、熱射病です。この状態になると体温が上昇し、意識障害やけいれんなどの脳の症状、低血圧などのショック症状も見られ、電解質(体の中の塩分)の異常を来たし、重症であれば多臓器不全(様々な臓器の働きが一度に低下すること)により死亡することもあります。高熱が特徴で、40度を越えることも珍しくはありません。毎年少なくとも50人以上が、熱中症で死亡しているといわれています。また直射日光が原因の場合には、日射病と呼んで区別されていますが、基本的には同じ状態です。
 では、どんな状態が危険なのでしょうか。乳幼児では車内や密閉された室内の高温の環境、学童期以降では高温下での激しい運動が原因とされています。親が目を離した隙に、毎年車の中で子供が亡くなったという悲しい報道があります。これが熱射病の典型なのです。
 まずは、予防することが大切です。しかし予防すること以上に大切なことは、まず熱射病ということを知ることです。熱射病は、生命にかかわることがあるということを知って下さい。予防法としては、大きくわけて二つあります。まず高温の環境を避けることです。特に直射日光下の車の中は最も危険です。短時間であればなどと考えずに、決して車には子供だけで置かないと考えて下さい。室内でも同じことが起ります。風通しを考えて、扇風機やエアコンなどを上手に使うようにして下さい。もう一つの予防法は、水分の補給です。時々外来で、「のどが渇いて欲しがるときは、好きなだけ与えていいのか」と質問されます。もちろん、子供のわがままで甘い飲み物のを欲しがる場合は別ですが、高温の環境下であれば好きなだけ与えて構いません。また乳児期では、のどが乾いたと訴えることが出来ません。のどが渇くと空腹と同じで、泣いて訴えることがあります。その場合には次の哺乳に時間がある場合でも、飲ませることが必要です。大量に汗をかいた場合にはイオン飲料が理想的ですが、基本的に与えるものは湯冷ましや麦茶など、何でも構いません。ゴムの乳首が嫌いな子は、母乳以外飲めないこともあります。その場合には回数が多くなっても、母乳を与えるようにして下さい。またミルクでも、同じことです。ミルクも補給する水分の一つと、考えてしまえばいいでしょう。
 暑さが続き、何と無く元気がなくなってきたような場合には、要注意です。過ごしやすい環境にして、十分な水分を与えることが大切です。水分や塩分が失われるので、治療として理想的なのはイオン飲料です。また夏風邪などで高熱が続いたり水分が取れない、嘔吐や下痢が続く場合は、熱中症になりやすいので十分気をつけて下さい。そして元気がない、水分が取れない、ぐったりしている、尿量が少ないなどの場合には、早めに受診して下さい。
 この季節、環境に十分配慮し、水分を多めに与えることを心がけて下さい。お年寄りも、熱中症になりやすいと言われています。おじいちゃんやおばあちゃんにも気をつけるように、伝えて下さい。
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