かわむら こども クリニック NEWS  平成5年11月号


母親の責任

 ここのところ、診療しながら感じる疑問について、話してみましょう。
 以前に新聞にも書きましたが、小児科の場合、病院に来る理由のほとんどは、お母さんたちの心配です。風邪をひいて鼻水や咳が出てても、自分から病院に行こうという お子さんはいません。熱が出ても、同じです。お母さん方が、”ひどくならないように”とか、”早いうちに治したい”とか、そんな理由で連れてこられています。もちろんそれを否定はしませんし、”心配ならいつでもつれてくればいい”と話しています。
 そこで一つ考えて欲しいのですが、子供たちには、病気や病院へ行くことを判断する力は、まだないということです。つまり、お母さんたちがその子供の決定に、責任を持つ必要があるということです。極端なことを言ってしまえば、子供の状態がいかに悪くとも、親が必要としなければ、治療が受けられないこともあるのです。少し強い言い方をしてしまいましたが、小生として言いたいのは本当はこれからです。
 子供の病気は小児科に限ったことではなく、症状によっては他の科を受診します。他科を受診しながら、風邪などで当院を受診することもよくあります。その時他科でどんな薬を飲んでいるかを尋ねても、答えられないお母さんたちが、時折います。ある病気で、半年近くも薬を飲んでいて、あまり効果がないような話も、時々聞かれます。その半年近く飲んでいる薬すら、知らないこともあるようです。
 もちろんその責任の一部は、我々医者にもあります。病状や飲んでいる薬の説明や服用の仕方について、充分話さない先生もいるでしょう。しかし自分のことなら別ですが、先に書いたように、お母さんたちは子供たちに対する責任から、子供の状態や治療の内容を知る義務、一歩譲っても知る権利はあります。今は昔と違います。
 お母さんたちが自由に、病院を選ぶ時代です。お母さんたちの知る権利を行使できるような病院を選ぶことも、与えられた義務かもしれません。
 不安のために、病院へ行くのです。薬だけ貰うなら、日本中どこへ行っても同じです。聞くべきことは何でも聞け、安心を持って帰れるような、病院のかかり方を心がけるべきでしょう。
クリニック NEWS コーナーに戻る