かわむら こども クリニック NEWS  平成20年 7月号


岩手・宮城内陸地震

 6月14日日の地震には、皆さんも驚かれたことと思います。突然の大きな揺れを感じて、頭には宮城県沖地震の恐怖が蘇りました。宮城県沖地震は、今からちょうど30年前の6月12日に起きたマグニチュード7.4の大きな地震でした。鮮明に記憶に残っているのは、自分が医師になった年と重なるからです。30年前医師の国家試験に合格して、大学病院で研修医として働き始めたばかりでした。仙台市内の最大震度は5でしたが、場所によって揺れの違いがあり震度6を記録した場所も会ったようです。突然の突き上げるような大きな揺れを感じて、慌てて机の下に潜り込んだことを覚えています。地震でもっとも印象に残っていることは、看護師のプロ意識でした。自分は医師になったばかりで、到底プロ意識持つ状況ではなかったことを反省をこめて思い出してしまいます。大学病院の看護師たちは地震の揺れが収まらないうちに、机の下に隠れている新米医師をしり目に、病室の子どもの元に駆けつけていきました。そして、余震の続く中こども達を脇に抱え、避難と誘導を始めたのです。あまりの手際よさに、新米医師の自分はただただ呆気にとられて見ているだけでした。プロ意識を見せつけられ、恥ずかしい経験が未だに思い出されます。地震に遭遇するたびに、その状況を思い出してしまいます。経験は必ず活かされるもので、地震に動じなくなり、患者さんを第一に考えられるようになったのは宮城県沖地震の経験のお陰です。
 岩手・宮城内陸地震は、6月14日8時43分頃の突然大きな揺れで始まりました。ついに宮城県沖地震が来たのかとの思いが、不安をかき立てました。スタッフ始め、来院していた患者さんも、大きな揺れに動揺していました。家の被害などは後回しにして、まずは待合室に駆けつけました。「クリニックの耐震は十分に考えてあり、地震で倒壊することは無いから大丈夫。怪我しても、病院だから安心してじっと待ってよう」と。大丈夫という言葉で安心したのか、患者さん達もパニックを起すことも無く、冷静に地震が終わるのを待つことができました。もちろんクリニックにも、被害はありませんでした。
 仙台市内の被害は軽微で安心していたのですが、時間が経つに連れてテレビを流れてくる映像を見るにつれ、宮城県北の栗駒市の甚大な被害には驚くばかりでした。ニュースでは、山の形が分らないほどの崩落、道路の一部だけが残っただけの土砂崩れ、旅館を押し流した土石流など、今までに目にしたこともないような大きな被害が報道されていました。直下型で限局された地域の強い揺れと、火山灰の地層の影響という理由で大きな被害になったようです。家屋の被害が少なかったことは不幸中の幸いでしたが、6月24日の官邸対策室の発表では、死者12人、行方不明者10人で、2週間後でも行方不明者が見つからないという異常な事態です。
 災害時における政府の対応が遅れることがたびたび問題となってきましたが、今回の対応はかなり早かったという印象があります。警察庁や消防庁では直ちに災害本部を立ち上げ、政府も直ちに災害対策室を立ち上げ、福田総理も「被災状況の早期把握、迅速な広報、被災者などがある場合は救助に全力を挙げるように」と指示。自衛隊のヘリコプターが地震直後に派遣されました。内閣府特命担当大臣が、午後には現地に赴き、栗原市に政府現地連絡対策室を設置するなど、医療面でも当日中に医師団が診療を始めるなど、従来の地震の教訓がかなり活かされた迅速な対応は評価できるものでした。
 話は変わりますが、宮城県沖地震は25〜40年という比較的短い間隔で周期的に発生しています。地震調査研究推進本部によれば2007年1月1日から10年以内での発生確率は60%程度、30年以内では99%とされています。もうひとつ、三陸沖南部海溝寄り地震は30年以内の発生確率が80-90%とされ、宮城県沖地震と連動した場合にはマグニチュード8.0前後の大地震になると予想されています。今回の地震が宮城県沖地震でなかったことに安心しましたが、逆に目の前に迫って来ている宮城県沖地震への不安がつのるばかりです。
 地震が起るたびに、教訓を活かすということが大事になります。今回のクリニックの対応や政府の対応は、教訓から生まれたものです。子育ても含め経験が教訓として形になることはとても大事なことですが、経験が活かされないということも侭あります。今回の経験を教訓として、必ず起る宮城県沖地震に向けての地震対策を忘れないようにしたいものです。
 最後に、この岩手・宮城内陸地震で亡くなられた方々の御冥福と行方不明者の一日も早い発見を心よりお祈り申し上げます。



地震が起きた時! ー家の中では?ー
1.身の安全を守る。

 身の安全が最優先。急いで机やテーブルの下に身を隠したり、家具の少ない部屋へ移動してください。机やテーブルがない場合には、座布団や本などで頭を保護してください。慌てて外に飛び出すことは危険です。屋根瓦やガラスの破片が落ちてくることがあります。

2.脱出口を確保する

 揺れが大きいと、室内に閉じ込められることがあります。身の安全が確保されたら、揺れの合間をみて、逃げ口を確保してください。

3.火の始末をする

目の前で火を使っていた場合や揺れが小さい場合は、すぐに消すようにしますが、身を守ることが優先です。揺れが激しい場含は、収まってから火の始末をしてください。

4.揺れが収まっても油断しない

 家族や同居人の安全を確認してください。大きな地震の後には余震が発生することがあります。倒れかかったタンス、本棚や冷蔵庫などには近づかないでください。

参考:愛知県防災局


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