かわむら こども クリニック NEWS 平成12年 5月号
インターネットの医療相談で思うこと
インターネットの医療相談が2000件を超えました。1996年3月からですから、ちょうど4年が経ちました。相談数も順調に増加し、診療以外の仕事としてもかなりの負担になっています。1件の返事を10分と計算してみると、100件では最低16時間になってしまいます。ボランティアとうたっているので、文句を言ったり非難はできませんが、気になっていることに触れてみたいと思います。
インターネットの医療相談の難しさは、相手が見えないということです。診療場面であれば、相手の表情や言葉を判断して言い方を変えることもあります。医師というのは正確なことを伝えるということは大切ですが、患者さんに必要以上の期待や不安を与えることは避けなければなりません。またインフォームドコンセントという言葉があるように、十分な情報を提供して患者の承諾の上に医療を行う必要があるのです。インターネットでは、相手が何を求めているかを文章だけで推測しなければなりません。もちろん文章で診断などの医療行為ができるものではありません。相談のほとんどの目的は、いわば“よろず悩み相談所”のようなものなのです。とは言っても、回答が相手にどんな影響を与えるかには、とても気を使っています。また小児科医に対する不満や不信などもあり、これらも返事を難しくしている要因です。小生の返事が患者さんや小児医療を混乱させることだけは、どうしても避けなければならないのです。
こちらの気の使い方と比べると、相談者にはかなり身勝手な部分があります。姓名などの記載の約束事がありますが、相談以外に名前さえ名乗らないこともあります。記載が不備の場合にはその旨を記し送り返していますが、送り返されたことが不満なのか梨のつぶてということも珍しくはありません。電話で名乗らなければ、いたずら電話と思われても仕方ありません。人にものを尋ねるときには、それなりの礼儀(文章の書き方)がありますが、用件だけということも結構あります。インターネットでは相手が見えないという理由からか、マナーとか礼儀とかが、軽んじられているのかもしれません。
また、インターネットで情報を得ることは無料という、誤解があるのかもしれません。確かに様々な情報が乱れ飛んでいます。各自が自分の情報として取り入れる訳ですが、選択が本人に任されているものは無料であって構いません。しかし一対一の対応の場合には、必ずしも無料である必要はないのです。医療相談と同じことを病院を受診して聞けば、診察料を取られのは当然です。診察後に疑問を電話をすれば、電話再診料を請求されても仕方ないことなのです。かかったことの無い病院へ電話で問い合わせれば、答えてくれないことが当たり前なのです。
先日、姓名などの記載が抜けていたメールが届きました。再度送ってもらった内容は、Q&Aと全く同じもでした。Q&Aを参照する旨を記載して送ったところ、次のような返事がきました。「ふざけるな〜〜〜!。『ルールを無視するな』みたいなことを言うからこちらも再度お願いしてメールしたのに。答えは、HPに書いてあるって、それだけか!。人を馬鹿にしてるんか!。たしかによく読まなかった自分も悪かったが。人をナメルのもええかげんにしろ!。このことは一生忘れへんから」。あきれて言葉も出ませんでした。他にも文字化けするのでもう一度送れとか、読めないからFAXや手紙で送れ、メールアドレスが間違っていて届かないなど様々です。最近常識という言葉の定義が変わってきたのか、常識という言葉に自信が持てなくなってきた気がします。
でもやめられない理由があります。医者の耳には直接入らないこと、親御さんの気持ちなど、医師にとって大事なことがわかるようになりました。そして自分の勉強、もっと大事なのは相談者の方からの感謝や励ましのメール。やめてしまおうと思うときに、ほんとに偶然に送られてくるのです。実際の感謝やお礼のメールを欄外に示します。
他人や自分のために役立っているかと、いつも考えてしまいます。しかし多くの人は、このホームページを必要としてくれていると思っています。そう考えなければ、続けていけないような仕事量になりつつあります。相談者も医療相談に対する十分な理解をもって、回答側の思いに気付いて下さい。インターネットに関係のない人は、この際礼儀や気の使い方について考えてみて下さい。なぜ小児科医が話さないのか、なぜ患者が聞かないのか、不思議な気分になることもあります。患者さんも自分の権利、親としての義務と考えて、医師の説明をしっかり引き出して下さい。こんな医療相談が無くなる日を夢見て、毎日こつこつと悪あがきしながら返事を書いているのです。
クリニック NEWS 平成12年 5月号 読者の広場
ホームページへの感謝のメール
「丁寧なアドバイスをいただき、本当にありがとうございました。(略)私は今まで「感情豊かな子供に 子供の能力を伸ばしてあげましょう のびのび育て!」そんなことばかり考えていました。でも、もっと大切なことは「命」なんですね。当たり前のことなのですが、今まで当たり前すぎて見過ごしてきたのだと思います。今後、活動内で是非、救急蘇生法の講習会を取り入れ、一人でも多くのお母さんに習得してもらえるように考えています。丁寧で心のこもったアドバイス本当にありがとうございました。お忙しいところ、ご返答いただきましたこと心より感謝しております。」。
「はじめまして、私はもうすぐ51歳を迎えようとしている男性ですが、恥ずかしながら、現在4歳と1歳の子どもがいます。その子ども2人が2・3日前から40度前後の高熱を出して、病院へ通院していますが、ぜんぜん熱が下がらずに、今日は下の子が、ひきつけを起こして、救急車を呼んでしまったりして、あわてふためいて、皆さんにご迷惑をおかけしていないかと、家内と悩んだり、どうしたら病気が治るのかとか、この夜中に、すったもんだ、話したりけんかしたりしていました。そんな時に、ふと、先生のコーナーをワラをもつかむ思いで拝見させていただきました。当面、どうするのが一番よい方法かも判りましたし、なにより、今、診てもらっている病院の先生への不信感が払拭できました。今、診てもらっている先生の処置が、このコーナーを拝見してからは、正しいことも知りました。大変参考になりましたし、先生のこのコーナーへの医師としての誇りがひしひしと伝わってきます。すばらしいいお医者さんがいるのだと、われわれ庶民も、医師不信感から偏った考えを無くしていけそうです。私は、過去にお医者さんのミスで子どもを一人、なくしていますから。先生のお蔭で、お医者さんを見る眼が、また変わりました。でも、お医者さんにも色々の方が、いることは承知しています。先生、どうかお体にお気をつけてがんばってください。貴重なコーナーやアドバイスを、本当にありがとうございます。」
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