かわむら こども クリニック NEWS  平成18年11月号


乳幼児医療費助成ピンチ!?

 身近な乳幼児医療費助成制度に関しては、皆さんよく御存じのことだと思います。しかし、現在宮城県で医療費助成制度が縮小されようとしていることを御存知ですか。医療費助成制度は各都道府県の独自の事業で、宮城県と居住する市町村が半分ずつ費用を負担しています。市町村では、県の制度に独自の制度を加える形で運用されています。つまり、国の事業ではないため各県毎に内容は異なり、県内でも市町村によっても助成の対象が違っているのです。現在の宮城県の助成制度は、入院は就学前まで、通院は2才までで、所得制限があります。昨年10月からは、現物給付方式を導入し、窓口での支払いの必要が無くなりました。一時の負担といえども窓口での支払いが無くなったことは、多くの皆さんから歓迎されているはずです。このように手厚くなったように思えた制度が、ここにきて縮小されようとしているのです。

 県の財政が危機的状況にあることから、新・財政再建推進プログラム策定され財政再建が進められています。聖域なき歳出の見直しに、乳幼児医療費助成事業も対象として上げられ、見直し区分としては縮小(一部自己負担の導入)の予定となっています。県の制度が一部自己負担と後退すれば、市町村の負担が増えて助成がより縮小することになるかも知れません。

 2005年の国勢調査では、人口は合計特殊出生率1.25の低下を受けて前年に比べて約22,000人減少しました。また65歳以上の老年人口は20.1%で調査以来最高になり、15才未満の年少人口は13.7%と最低となりました。今の状況では総人口が減少することにより高齢化率は上昇を続け、2050年には35.7%に達し、国民の約3人に1人が65歳以上の高齢者という極めて高齢化の進んだ社会社会になると考えられています。高齢者が増加するということは、支えるための世代の負担が多くなる訳です。

 このような子育て支援策は、全国的にみると少子化対策の一環として、多くの自治体では手厚くなる方向に進んでいます。もちろん子育て支援は乳幼児医療費助成だけではありませんが、お金の心配をせずに医療が受けられるということもとても重要なことです。また医療は別の観点からも考えなければなりません。話を戻しますが、万が一医療費の負担増加で、適切な医療が受けられない、受診が遅れてしまうことも起りうることでしょう。そのような状況の中で、将来を支える子どもたちに万が一のことがあれば、経済的損失は大変なことです。その損失は、医療費助成を削減するどころではないはずです。東京都では乳幼児医療費助成制度の対象は通院入院とも就学前までで、少子化が著しい23区では所得制限が無いだけではなく、15才まで対象年齢が拡大されている区もあります。東京の特殊合計出生率0.98に対して宮城県1.19ですが、全国的には下から9番目でかなり低い方です。低いからこそ、対策が必要なことは言うまでもありません。9月の定例県議会で石橋議員(公明党)が乳幼児医療費助成問題について質問し、知事は「(略)乳幼児医療費助成制度については、他県の状況や市町村の動向なども参考にしながら、この制度の意義を踏まえ、財政状況も考慮し、その枠組みがどうあるべきかを慎重に検討しているところであります。(略)いずれにいたしましても、乳幼児医療費の助成制度の見直しにつきましては、大変難しい問題であり、もう少し市町村はじめ関係機関、関係団体の御意見も伺いながら、慎重に検討し判断してまいりたいと考えております。」と答弁しています。

 確かに宮城県の財政は大変な状態です。聖域なき歳出の見直しも仕方ないかもしれません。しかし、子どもたちは県ひいては国の大きな力であり宝です。将来国を支えていく子どもたちのためにも、安心して産み育てることができる環境が絶対必要です。若い世代の親御さんは、政治ということに無頓着かもしれません。どうせ何を言っても変わらないと思っているかもしれません。国も県もお年寄りには多くの援助をしていますが、子育てのための援助は十分ではありません。でもこの問題は、今目の前にある問題なのです。知らなかったからといって、来年から窓口の負担が始まってしまえば手遅れです。こんな時こそ、声を大にして乳幼児医療費助成の縮小に反対しましょう。そして我々小児科医も、医療費助成の縮小に反対する活動を展開します。親御さん達とともに、医療費助成制度を守ろうではありませんか。



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