かわむら こども クリニック NEWS  平成6年1月号


最近の感染症

《特に麻疹について》
 最近の感染症について、少しお話ししましょう。
 1月末から2月にかけてのインフルエンザの流行は、皆さんも御存知のはずです。流行も一段落したと思っているうちに、またインフルエンザが流行しました。今回はB型が主流で、以前ほど症状は激しくありません。しかし咳や発熱の持続は長く、苦労したお母さんも多かったようです。インフルエンザは、症状を総合して診断するため初期には困難ですが、家庭内で同じような症状があれば、インフルエンザの確率が高くなります。
 3月に入ってからは、例年になく麻疹(はしか)が多く見られるようになりました。昨年は1年を通しても数人程度でしたが、2月末からはすでに10人以上の子が麻疹にかかっています。麻疹は重症で7〜10日程度熱が続くだけでなく、大きな問題も抱えています。麻疹の始まりは、カタル期と言って風邪の症状とほとんど区別できません。つまり熱が上がり咳が出て始まるのです。当然お母さんたちは、風邪と思い普通に待合い室で待つことになります。また始めのうちは、我々小児科医でも区別が困難で、インフルエンザや風邪が流行している時にはなおさらです。感染力が強いため知らない間や待っている間に待合い室で、うつってしまうことがあります。当院のように、隔離室を設け、院内感染を予防するつもりでも、麻疹の場合は限界があり完全に感染を予防することは不可能です。
 前にも述べたように麻疹は重症です。咳もひどく熱が7〜10日続くことも珍しくはありません。幼児では、十分な水分の摂取が不可能になり、脱水を来たし点滴を行うこともよくあります。発疹が3〜5日目に出現し、始めピンク色をしていますが次第にくすんで汚くなり、ひどい子では皮下出血も見られ、それだけでも重症に見えてしまいます。かかった子のお母さんの多くは、麻疹の重さにびっくりするようです。名前はみんな知っている病気なのですが、重症であることは余り知られていないようです。 麻疹の根本的な治療は、残念ながらありません。二次感染を予防するために抗生物質を投与し、あとは対症療法(咳に対してせき止め、熱に対して解熱剤、脱水に対しては点滴など)を行い、麻疹が治まるまで時間を稼ぐこと以外にはありません。治療法がないため予防することがもっとも重要です。今回15人程度の麻疹の子がいますが、全員予防接種未接種児です。そのうち何人かは、入院が必要となりました。
 麻疹は、本当に怖い病気です。予防接種の副反応はゼロではありませんが、麻疹にかかってしまえば副反応と同じことが起こり、その確率は予防接種の何十倍の確率で起こってきます。ここで声を大にして言います。1歳過ぎてまだ麻疹の予防接種を受けてないお子さんはポリオを後にしても、なるべく早く接種するようにしましょう。
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