かわむら こども クリニック NEWS  平成25年7月号


子宮頚がん予防ワクチン接種見合わせ

 皆さんもご存知のように、本年4月からヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン、子宮頚がん(ヒトパピローマウイルス感染症)予防ワクチンが定期接種になりました。

 ところが、2011年頃から、子宮頚がん予防ワクチン接種後に、長く続く痛みをきたす例があり、本年6月14日、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会が開催され、副反応報告について審議が行われました。この結果、ワクチンとの因果関係が否定できない持続的な疼痛が子宮頸がん予防ワクチン接種後に特異的に見られたことから、副反応の発生頻度等がより明らかとなるまでの間、子宮頸がん予防ワクチンの定期接種を積極的に勧奨しないよう、厚生労働省から勧告されました。

 副反応を考える前に、まずは子宮頸がんについてのおさらいです。
  “この病気の原因が、ウイルスであることを知っている人は少ないかも知れません。日本では約15,000人が毎年子宮頚がんと診断され、3,500人もの命を奪う病気なのです。がんというと高齢者の病気と思われがちですが、20~40才の若い世代ではがん死亡の第2位となっているのです。この子宮頚がんの原因のほとんどが、 HPV(ヒトパピローマウイルス)によるものと考えられています。このウイルスは、性交によって伝播し、約80%の女性が生涯に一度は感染するとされています。もちろん感染した女性が、全員子宮頚がんになるのではなく、そのうちの1,000人に1人が、がんに進行といわれています。つまり、HPVの感染を防ぐことができれば、子宮頚がんを減少させることが出来るのです。子宮頚がんの死亡を減少させるための有効な手だての一つはがん検診ですが、日本での受診率は先進国でも最低です。この検診率を上げること以外の予防法は、HPVワクチンになる訳です。性交によって伝播するウイルスなので、ワクチンの接種時期はセクシャルデビューする前の11~14才が推奨されています。(略)子宮頚がんは女性であれば、誰でも罹患する可能性がある病ですが、ワクチンで予防できる病気の一つです。”(2010年2月号「新しいワクチンについて」修正引用)

 次は接種後の痛みに関して解説しましょう。初めての症例は2010年9月接種の14歳の女性です。2 回目接種後、接種した腕の腫脹、疼痛、しびれがあり、その他、左肩、左足、右腕、右足にも間隔を空けての痛みがおきました。夜間には肩から腕全体に痛みが広がり、疼痛のため歩行もできなくなりました。接種1週間後に複合性局所疼痛症候群(CRPS:complex regional pain syndrome)が疑われました。

 昔戦争で負傷した兵士が、傷が治癒後にも激しい痛みを訴えたことから、病気の存在が認識されました。その後、外傷が無くても同じような症例が見つかり、CRPSと呼ばれています。CRPSは外傷、骨折、注射針等の刺激がきっかけになり、他のワクチン接種後にもみられることがあります。ワクチンの成分によるものではありませんが、はっきりした原因や背景因子は不明です。我が国において、子宮頸がん予防ワクチン接種後にCRPSを発症した例は3例で、接種本数828万本からみれば極めてまれな疾患です。医療機関からの副反応報告数は、サーバリックスは0.014%(うち重篤0.0013%)、ガーダシルは0.012%(うち重篤0.0009%)です(厚労省)。

 となれば、どう考えたらいいのでしょうか。子宮頸がん制圧をめざす専門家会議から、次のような見解が出されています。
 “これまでに、1回または2回の接種を済ませたが、今後のワクチン接種をためらっている方は接種医に相談してください。それでも不安な方は、ワクチンの積極的接種勧奨が再開してから、接種を行うことをお奨めします。ワクチンの標準的な接種間隔は「6か月間に3回」ですが、接種間隔が延びても3回接種することによって、十分な効果があります。1回または2回で中止してしまうと、十分な効果が得られない可能性があります。”(引用:子宮頸がん予防ワクチンの接種について)

 今回の勧告は子宮頸がん予防ワクチンの積極的接種勧奨の差し控えであり、中止ではありません。勧告では、副反応について可能なかぎり調査をし、速やかに専門家の評価を行い、積極的勧奨の是非を改めて判断する予定と記されています。
接種に関しては、接種医とよく相談した上で有効性とリスクを理解した上で接種を判断しましょう。


 ・子宮頸がん予防ワクチンの接種について悩まれている方への具体的アドバイス(子宮頸がん制圧をめざす専門家会議)


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