かわむら こども クリニック NEWS  平成6年6月号


医療保険制度の改革について

 皆さんは、厚生省のもくろんでいる医療に対する考えをご存知ですか。医療費は年々増加の一途をたどり、ここ10年で1.5倍以上増加し、健康保険の赤字が続いていています。国民一人当たりの年間の医療費の平均がどのくらいなのか、皆さんご存知ですか?。恐らく知らないと思いますが、何と約21万円です。国民の医療費全体では、27兆円にもなってしまいます。気の遠くなるような金額ですね。確かに、医療が進歩し先端的な医療で命が助かる人も多くいます。また老人の人口に対する割合が増えれば、医療費が増加するのはやむを得ないのも確かです。厚生省は、その医療費を主に患者さんの負担を増やすことで解決しようとしています。方法としては患者負担の見直し(増額)・保険料の引き上げ・薬剤の負担の変更など様々です。たとえば風邪などの病院にかかる必要のない病気では、薬剤が保険適応から外されたり、負担が5割に増やされたりする可能性があります。
 大人と子供の医療費を同じと考えるところに無理があるのです。子供では慢性的な病気は少なく、大部分は風邪です。お母さん達が心配するのもこの風邪です。風邪で病院にかかる金額が多くなれば、病院に行きにくくなります。市販の風邪薬はいかにも効きそう(本当は余り効かない?)ですが、効かないため病院を受診したことも多いと思います。市販薬の方が安くすむという保証は、どこにもありません。極端な考え方ですが、“安心して病院にかかれない”、“保険の負担が増える”などで、また子供の数が減ってしまいます。そうすれば老人の受け皿となる若者の数が減ってしまい悪循環がつくられ、また負担が増えることになってしまうのです。小児科は、お母さんの心配で来るところです。当院ではかかりやすくするため、包括化の採用を延期しています。この国の未来は、これから生まれてくる子供たちが支えていくのです。今の福祉という言葉は、どうも老人寄りになってきています。安心して子供を産み育てられることも大切なことの一つです。そんな環境作りが行なわれるように期待しています。
 確かに見方によれば、不必要な医療も行なわれているかもしれません。それを言ったらキリがありませんし、それは各病院が自覚をもって行えばいいことです。もちろん当院では、そんなことはないと自信をもって言うことができます。病院の掲示システム、これも費用の割に医療上の効果はありません。お母さん達とのコミュニケーションを目的においてあるのです。儲けを追及(言葉が不適当で申し訳ありません)するなら、そんな無駄なことはしません。お金も取れない新聞を発行する必要もなく、インターネットで無料の医療相談をする必要もありません。(そんなことよりテレビを見ているほうが楽です)しかし、これが開業からのポリシーと考えています。
 今回は、少し難しい話をしてしまいました。これを機会に医療と保険というものを考えてみましょう。皆さんのご意見をお待ちしています。

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