かわむら こども クリニック NEWS  平成9年 5月号


健康保険制度改革 ’97

 医療保険制度については昨年の10月号にも書いてあるので、皆さんも御存知のことと思います。今国会で審議されている健康保険法も、この中の一つです。
 医療費は年々増加の一途をたどり、ここ10年で1.5倍以上増加し、健康保険の赤字が続いていています。国民一人当たりの年間の医療費の平均がどのくらいなのか、皆さんご存知ですか?。恐らく知らないと思いますが、何と約21万円です。国民の医療費全体では、27兆円にもなってしまいます。この赤字の解消こそが、国としての大きな問題なのです。この目的として本人の負担を1割から2割へ引き上げる。薬剤費を一定の割合で負担する。老人の入院費の負担を増やす。ことが確実になってきています。しかし政府案がすんなりとは通らず、修正案が示されています。
 この中で問題なのが、薬剤費の負担です。政府案としては、外来薬剤1種類1日分につき15円ということになっていました。しかし修正案では投与日数にかかわらず、薬剤の数による負担を求めています。はっきりしたことは不明ですが、これは小児科にとってはかなり大きいことになるかも知れません。この問題は、もともと医療費の中に占める薬剤の割合が諸外国より多いことに端を発しているのです。小児科の場合はそんなに問題になることではなく、老人での薬の割合が多いことが原因となっているのです。その薬を減らすために患者さんの負担を多くして、薬の処方を減らそうとしているのです。もちろん不必要な薬を減らすことには賛成です。ところが政府、各政党やマスコミまで、大人も子供も一色単にして考えてしまっているのです。当然老人や大人と比べれば、小児科の子どもたちは処方する薬の種類は少なく体が小さい分だけ量も少ないのです。それを大人と同じように、一剤当りの金額や薬剤数による負担を求めることは間違っているのです。薬剤費が少ないにもかかわらず、負担を大人と一緒ではむしろ負担の割合が高くなるのです。つまり子供により多くの負担を求めることになるのです。老人と比べ小児科では急性の病気が多いため処方の日数は短くなります。まして投与日数に関係ない薬剤数による負担では、処方ごとにその負担がとられるとすれば、又ここでも何倍もの負担を、子どもたちがしなければならないのです。
 それでいて片方では、少子化のため子供を安心して育てる環境作りが必要だと厚生省その他は言っています。薬剤も含め医療費の負担が多くなれば、安心して子供を病院に連れていくことも考えなければなりません。ひいては、子供を産み育てることの不安の一つにもなるかも知れません。それだけではないと思いますが、少子化に歯止めを掛けることもできないかも知れません。
 小児科は、病気でなくても来るところです。親御さんたちの不安の解消も小児科の一つの目的です。政府、各政党やマスコミも医療費の抑制を押さえるためには、医療の包括化が必要と考えています。当院は以前から言っているように、病気でなくても相談に来れることを考えて医療費の包括化は採用していません(包括化にすると医療費は高くなってしまいます)。またこの新聞もインターネットでの医療相談も無料で、ボランティアとして行っているのです。安心して子供を産み育てることを一小児科医として考えているのですが、残念ながら世の中はそう動いてはくれません。
 今までも署名を頂いて、反対を唱えてきましたが、なかなか理解してもらえそうにありません。小さい意見がどれだけ力になるかはわかりませんが、子供の味方の小児科医としては頑張るつもりです。応援是非お願い致します。またまた難しい話になりましたが、御意見お待ちしています。(この情報は確定ではありません。内容に誤りがあれば、お許し下さい。)
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