かわむら こども クリニック NEWS 平成14年 5月号
おばあちゃん
今回は、おばあちゃん(おじいちゃんも)のことについて、考えてみましょう。診療中に、おばあちゃんの話題が出てくるパターンは、大きく分けて2種類あります。一つはおばあちゃんがうるさく言う場合と、入院などで協力してもらう場合です。
先日、イギリスからの医療相談を受けました。「4ヶ月ぶりに日本から里帰りを終えてイギリスに帰ってきました。すっかりおばあちゃん子になってしまい、今私の母もこちらにいますが、娘は何をするにもおばあちゃんがいないと泣いてしまいます。私のことはおそらく、お姉ちゃんと思っているのでしょう。夜もベットをいやがりおばあちゃんの胸でしか眠ろうとせず、正直いってこれから慣れるのか心配です。まだ帰国して2日です。これからどのように彼女に対応すべきか悩んでいます。どうぞよろしくお願いします。」。確かに特殊な情況かもしれません。しかしこのメールには、お母さんの思いとは他に、おばあちゃんの辛い思いが隠れています。
さて皆さんなら、どう答えたでしょうか。続いて返信です。「御返事します。子どもというのは、自分を許してくれる人に甘えます。おばあちゃんの方がお母さんより、許してくれる範囲が広いのは当然でしょう。おばあちゃんはお孫さんを目に入れても痛くないものです。そう考えれば、おばあちゃん子になってしまうの当たり前のことです。しかし現実というものがあります。子どもにとっても、いつも甘やかしてくれる環境で過ごすことは、必ずしもいいことではありません。もう一つ大事なことは、おばあちゃんが日本に帰らなければならないことです。お母さんがどんなに心配しても、その事実だけは確かです。子ども(この時期)の記憶は、かなりあいまいなものです。長く覚えていることは出来ません。最初は騒ぎますが、すぐに自然に忘れてしまうものです。同じような情況は、子どもが初めて保育園へ行くのと同じです。最初はお母さんから離れるのがいやで大泣きしますが、次第に慣れていき泣かなくなります。何も心配はいりません。必ず慣れると、信じるしかないでしょう。お母さんがそんな思いをしていると、今度はおばあちゃんがかわいそうです。おばあちゃんが後ろ髪引かれるような心配を残したまま、帰国させるわけにはいきません。おばあちゃんも、お子さん(お孫さん)と同じ思いなはずです。そのおばあちゃんのためにも、お母さんがお子さんを信じてあげて下さい。お子さんのお母さんは、世界中探しても○○さん(ごめんなさい固有名詞を使って)だけなんです。母親としての、自信を持って!!。」。辛い母親を見て、おばあちゃんちゃんは、もっと辛いはずです。これもおばあちゃんの一つの姿なのでしょう。
おばあちゃんは、孫のことが可愛いあまり、食事、病気や躾など様々な所に口を挟みます。時によっては、わがままを優先してしまうことにもなります。基本的におばあちゃんは、孫に口うるさく言って嫌われたくはないのです。子どもに対する思いの違いから、姑さんとお嫁さんの間には行き違いが生じてしまうこともあります。逆に、入院やお出かけの時には、おばあちゃんに頼らなければならないこともあるのです。
子どものためには、おばあちゃんと上手な関係を作ることが大事です。そのためには、お互いの気持ちを思いやることも大切なことです。どちらも子ども(お孫さん)のためと思っているのですから。しかし、おばあちゃんのすること全てを、必ずしも許す必要はありません。子どもにとって、悪いことは悪いと判断するのが母親の役目です。子どもの母親は世界中探しても、自分一人だという自信を持つことが必要だと思います。機会があれば、おばあちゃんにも是非読んでもらって下さい。
クリニック NEWS コーナーに戻る