かわむら こども クリニック NEWS  平成6年7月号


食中毒

−病原大腸菌O-157を中心に−
 暑くなり食中毒が心配な季節になりました。最近の報道でも、病原大腸菌O-157が問題となっています。今回は、O-157を中心に食中毒について考えてみましょう。
 食中毒は、大きく分けて感染型と毒素型に分けられています。感染型というのは、最近が体に入り増殖し、症状を起こすもので代表的なものにサルモネラ菌・腸炎ビブリオ・病原大腸菌などがあります。毒素型というのは、細菌が毒素を産生しその毒素により症状を起こすもので代表的なものにブドウ球菌があります。両者で、多少症状は異なりますが、発熱、嘔吐、腹痛、下痢などがあります。食中毒以外でも細菌による下痢を来たすものに、カンピロバクターなどもありますが、赤痢はあまり見られなくなりました。
 難しい話は、さておきなぜ病原大腸菌O-157が、これほど問題になるのしょうか。それは、死亡することがあるということからです。医学が進歩し、発見が早くなりや治療が進んだため、細菌性下痢症(食中毒)で死亡することが少なくなりました。O-157が有名になったのは、19990年に浦和市の幼稚園で死者2名が出たのがきっかけです。この菌は、腸管出血性大腸菌と呼ばれて、血性(ほとんど便の成分がない)下痢が特徴です。症状は、初めは腹痛を伴う水様性下痢で始まり次第に下痢の回数が増加し、1〜2日後に鮮血が混入し、典型的な場合は血性下痢となります。これは細菌が産生する毒素(ベロ毒素)で、腸管の粘膜(内側)が破壊されたために起こるものです。下痢だけで死亡することはありませんが、この毒素が、腸管から全身に広がり、溶血性尿毒症症候群が引き起こされ死亡の原因になっています。これは、溶血や腎不全(溶血性尿毒症症候群)になったり、意識障害や痙攣などが起こり重症化するためと考えられています。
 実際、報道されると多い病気と思われますが、集団の食中毒以外は比較的少ない病気です。今の所宮城県では、たったの一人だけです。決して多い病気ではないので、必要以上の心配は無用です。感染の経路がわからないことが多いのですが、牛などの家畜由来と考えられています。その他汚染された井戸水、人から人への感染も考えられています。
 O-157の場合は、治療法が確定されていません。下痢は、最近や毒素を体外に排泄する生体の防御反応なので、下痢止めの使用は控えるのが一般的です。また抗生物質の使用についても、一定の意見はありません。まして、溶血性尿毒症症候群に対する治療法はないのが現実で、対症療法のみです。
 やはり大事なのは、予防です。予防は、他の感染型食中毒と同じです。充分加熱することが最も大切です。70℃で1分以上加熱すれば死滅すると言われています。もちろん中までの加熱が必要です。気温が高くなると食中毒が増えることからもわかるように保存の仕方も考えてみましょう。冷蔵庫は100%安心ではありませんが、4℃以下に保てば、細菌の増殖は押さえられます。扉の開け閉めは最低限にして、余裕をもって収容することが、庫内の温度の安定だけでなく電気代の節約にもなります。汚染されたものから、他のものにも広がります。包丁やまな板もにも気を配りましょう。
 基本的なこととして、手指の洗浄消毒が大切なのは言うまでもありません。
 必要以上に不安を持たず、食中毒予防の基本を守りましょう。また下痢が続くときには、早目に受診することも大切です。

病原大腸菌O157の情報を提供します
大阪大学医学部のものです

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