かわむら こども クリニック NEWS 平成21年12月号
インフルエンザ雑感
今年最後の記事も新型インフルエンザになってしました。今回は、感じていることを遠慮無く書いてみます。
正直言って、開業以来これほど思いが伝わらないことは、ありません。患者さんからこんなメールをもらいました。「先生、こんばんは。いつもいつもお世話になってます。遅い時間にすみませんm(_ _)m。今日は、新型インフルエンザの予防注射のお話、ありがとうございましたm(_ _)m。幼稚園のお母さんから、「どうして注射できたの?喘息持ってないよね?どこで?」「うちの子だって喘息持ってて今日だったんだよ。」と言われ、また別のお母さんからは「喘息持ってるのにまだできないのに」など、非難に近いような質問、疑問をぶつけられたので、直接先生に伺ってしまいました。お話を聞いて、川村先生を始め、スタッフの皆さんの休日返上のお陰だと知り、本当に頭が下がる思いです。ありがとうございましたm(_ _)m。かかりつけの小児科が、「かわむらこどもクリニック」で本当に良かったです。毎日忙しくて、お休みも返上で、大変だと思います。みなさん、身体に気を付けて頑張って下さい。これからもよろしくお願いしますm(_ _)m」。当院では10月中旬から登録を始めて、少しでも早くという意識から11月2日に登録者のうち基礎疾患を持っているお子さんをピックアップして、新型ワクチンの接種始めました。基礎疾患を持つお子さんへの接種は11月中旬には終了しました。東京や大阪で小児への前倒しの接種が始まったこともあり、余ったワクチンの有効利用を考えました。かかりつけの患者さんへの少しでも早い接種による感染の予防を目的に、休日当番の翌日の11月23日(祝)に休みを返上して、午前中に150人のワクチン接種を行いました。前日の休日当番にもかかわらず、スタッフは愚痴一つ言わず協力してくれました。新型ワクチンの登録者は、11月中旬には600人を超えました。接種にあたり優先接種者、前倒しになった接種者に、すべて個別に電話連絡をするため、スタッフは連日21:00過ぎまで残業の日々でした。かかりつけの患者さんを大切にして、少しでもメリットがあるように、対応していた訳です。小児科へのワクチンの配付は平等に行われているので、他の医療機関も同じ対応ができたはずなのですが。ワクチンに余裕があるにも関わらず、接種を先延ばしにするメリットはありません。しかし、休みを返上して接種することは誰でもできることではないのでしょう。このような努力をしていても、我々の意図は伝わらず、感じ方は人によって違ってくるものです。今回のメールのように、非難に近いような質問、疑問をぶつけられるいわれはありません。まして、当院の患者さんに向かっての非難など、もっての外です。どんな考えで、ワクチンを使うかは医療機関ごとの判断によるものです。我々に非難を向けるのではなくて、かかりつけの先生に要望を伝えてもらいたいところです。多くの患者さんは早く接種できたのは、ラッキーと思っています。そう、よろこんでもらえるのは、院長はじめスタッフの心意気と犠牲の上になり立っていることを付け加えておきます。
もうひとつは、インフルエンザ迅速検査です。正直「もういい加減にしてください」という心境です。ちょっとおさらいです。インフルエンザの診断は、周囲の流行状況と症状が基本です。集団生活や家族にインフルエンザがいて、1〜3日以内に熱が出れば、現状ではインフルエンザと診断しても90%は正解です。迅速検査の陽性率は60〜80%といわれているので、診断に関しては臨床診断の方の確率が高いのです。にもかかわらず、検査を希望する人があとを絶ちません。検査で痛い思いをして陰性、心配している親御さんは結果に関わらず抗インフルエンザ薬を持って帰ることになります。その場合のお子さんの苦痛は、何のためだったのでしょう。前にも同じことを書きましたが、検査は子どものために行うものです。もちろん治療も患者さんのためであり、病気の治癒を早め苦痛を軽減することが目的です。高熱などの症状があり臨床的に判断できない場合には、検査が必要ということは言うまでもありませんが、あくまでも参考ということです。この検査偏重主義のために、子どもが苦痛を与えることは避けなければなりません。それ以上に問題なのは、熱が下がって元気もあるのに検査を望むことです。心配な気持ちは理解できますが、症状がないか軽い場合には、無理して検査をして痛い思いをする必要はないのです。大人は熱が下がれば自分の検査しないはずですが、子どもでは検査を希望します。それは子どものためではなく、幼稚園や学校のため、もしくは親御さんの心配のためです。他人のために子どもが辛い思いをすることは避けるべきで、子どもの苦痛を防ぐのが親御さんの役割です。それだけならまだしも、検査の必要がないと伝えると、ふてくされて医師の判断を非難する親も少なくはありません。熱が下がって子どもが元気であれば、それでいいと考えられないのでしょうか。新型インフルエンザは多くは軽症で済むのですから、また熱が上がってから考えればいいことです。
クリニックとして個人の時間を犠牲にしてまでも、子どもたちのことを考えていることが十分伝わらず、残念に思っています。もちろん引用したメールのように、多くの親御さんは我々の取り組みを理解しくれていると信じています。以前も記事にしましたが、いい医者の条件は患者さんの要求に何でも応えることではなく、子どものことを第一に考えて適切に検査・治療をすることではないでしょうか。愚痴のようなことを書いてしまいましたが、ここのところの激務とせいと思って、笑ってお許しください。
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