かわむら こども クリニック NEWS  平成20年 2月号


インフルエンザ 新しい話題

 毎年、この時期になると、どうしてもインフルエンザの話題に触れなければなりません。昨年は全国的に流行が早く、年末にも流行が拡大することが危惧されていました。しかし、一部の地域で流行はあったものの、当院の周辺では現在少しずつ流行が拡大してきています。
 様々な話題がありますが、まずは診断について復習しましょう。診断は検査という風潮がありますが、大事なことは臨床診断です。臨床診断というのは、周囲の流行状況と症状によるものです。高い熱が出たからと、急患センターや小児科に駆け込んでくる人も多いものです。しかし、子どもの場合は症状だけでは、初期にはカゼと区別がつかないことも多く診断が難しいこともあります。もちろん保育園・幼稚園・学校で流行しているとか、家族にインフルエンザがいるなどの場合は別ですが。まして、熱が出たばかりではインフルエンザであっても検査は陽性にならないのです。最近は検査も改良されて陽性になるまでの時間は短くなりましたが、確実性を高めるために38℃以上になって5〜6時間は必要です。急患センターなどでは早い時期の受診では解熱剤だけということになりかねないし、インフルエンザが流行すると待ち時間が長くなりインフルエンザ以外の病気なのに待合室で本物をもらってくるということにもなりかねません。検査にも限界があると言うことを理解して、受診のタイミングを考えてください。
 次の話題は、もちろんタミフルです。インフルエンザと診断した場合は当院では、資料を渡しタミフルの情報と考え方を伝えています。ご承知のように、厚生労働省は2007年3月から10才代へのタミフルの使用を原則中止にしています。昨年末から、いくつかのタミフルと異常行動の報告が出されています。厚生労働省の研究班が昨冬に行なった約1万人を分析した調査では、おびえるなどの軽度の異常行動を含めた発生率を見ると、服用者の異常行動の発生率は10%で、服用しない人では22%でした。服用者の発生が少ないという結果で、10〜17歳でも同様の傾向でした。生命にかかわる異常行動では発生率に大きな差がみられませんでしたが、「まだ解析の余地があり、因果関係は判定できない」と報告されています。別の研究班が行なった異常行動を起こした137人の患者の調査では、6割がタミフルを服用、服用していない場合でも4割で異常行動がみられたと報告されました。この研究でも、因果関係を判定することは現在のところ不可能です。それ以外にも吸入薬のリレンザでも異常行動がみられたとの報告もでています。
 さてタミフルは使わない方がいいのでしょうか?。それとも使うのが正しいのでしょうか?。実際にはなかなか難しいところです。「前に使った時、何も起きなかったから大丈夫」という親御さんがいます。しかし、これは今回の使用でも安全という根拠にはなりません。確かにタミフルを使わなかった場合に、明らかに重症と感じるようなお子さんもいます。でも、使わなかったらどうなった、使ったらどうなったという比較は出来ません。大事なことは親御さんとよくコミュニケーションをとり、十分な納得の上に使いたいと思っています。治療に関しての最近の話題をもうひとつ、それはタミフルの耐性です。耐性ということはご存知だと思いますが、薬が効かなくなるということです。抗生物質の耐性という言葉が一般的で、抗生物質を安易に、とくに長期にわたって使い続けると、細菌が耐性を獲得して普通の抗生物質が効かなくなることです。最近ヨーロッパで流行しているAソ連型ウイルスに、タミフルに耐性を示すウイルスが広がってきていることが報告されました。研究チームによると、約14%が耐性を示し、ノルウェーでは耐性が70%を占めていると報告されました。北欧ではタミフルの使用量が少ないため、耐性化がタミフルの影響ではなく、遺伝子の突然変異が原因と考えられています。日本では耐性ウイルスはほとんどないとされていますが、耐性化は細菌だけでなくウイルスでも大きな問題です。あくまでも可能性ですが、タミフルの乱用はこのような耐性ウイルスの出現にも大きな影響与えるかもしれません。タミフルの使用は、抗生物質と同様に症例を選んで必要最小限に使うことが望ましいと考えています。
 インフルエンザの予防は、うがいと手洗い、マスク(エチケットマスク)が基本。そしてバランスのよい食事をとり、規則正しい生活を心がけましょう。またタミフルなどの好インフルエンザ薬の使用の有無に関わらず、次の点は十分注意してください。
 ・異常行動の可能性を十分理解してください。
 ・2日間は一人にならないよう配慮してください。


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