かわむら こども クリニック NEWS  平成7年5月号


お父さんの役割

 今回は、子育てにおけるお父さんの役割について考えてみましょう。最近子育て支援という言葉を耳にします。少産化の時代となり、核家族化が進み子育ての情報も十分ではありません。そのため行政その他による支援が求められています。その中でもっとも大切なのは、お父さん(ご主人)の支援かもしれません。
 しかし、ここで言いたいのは、“お父さんも積極的に子育てに参加しましょう”ではありません。確かに外来を見ていると、昔と比べると、お父さんの姿も多くなっています。時には、よくお父さんが連れくる子もいます。しかし多くは、休みの土曜日に連れてくることになります。しかしお父さんに聞いても、どんな症状が何時からかさっぱり把握していないこともあります。これは、子育てに参加していると言っていいのでしょうか。これでは、むしろお父さんは、ただの足だけなのです。
 お父さんはいつも社会の荒波にもまれ、大変な思いをしながら仕事をしています。朝早くから、よる遅くまで、身を粉にして働き続けています。そんなお父さん達が、子育てまで協力するということは、ほとんど不可能です。男性の育児休暇が取れる人は、果たしてどれだけいるでしょうか。先日テレビで、北欧の育児休暇の話がでていました。50週前後取れ、そのうち最低4週は男性が取らなければならないようです。取材に応じた人は、お母さんが政治家のため、育児休暇は12週で残りは全部ご主人がとり、もちろん給料は80%程度はもらえるということです。こんなことは、もちろん日本では不可能のことです。やはり、ただの足だけにしかならないのでしょうか。
 子育ての支援のなかでもっとも大切なものは、精神的なものと考えています。小児科医も、その一部をになっていることは当然です。小児科医の大切な役割のひとつは、お母さんに安心を与えることです。当院でも新聞や説明を通して、お母さんが安心を持って帰れるように努力しています。でも時間的には、短いものです。1日点滴をして病院にいる間や電話の問い合わせでも与えられるかもしれません。でもそこまでです。夜が更けるに連れ、不安が増してくのは当然のことです。そこでは何の役にもたちません。こんな時支えられるのは、誰でしょう。
 “育児で困ったときまず第一に相談する人は?”というアンケートの結果の第1位は、お父さんです。やはり奥さん達が頼りにしているのは、ご主人なのです。主婦業を仕事に換算すると、いくらになるという話題があります。逆に言えば、それだけ認められていないのです。お母さんの子育てを仕事に換算するといくらになるのでしょう。これを読んでいるお父さん、まさか子育てでお母さんが苦労するのは当たり前などと思っているのではないでしょうね。
 お父さん達に、“お母さんの変わりに子育てをしなさい”という気持は、毛頭ありません。まず最初は、母親の苦労というものを認めてあげててください。そしてそれを評価してあげてください。それは精神的なもので結構です。何日もお子さんの熱が続き、お母さんが看病し病気が直ったら一言“ご苦労さん、おまえのおかげだよ”と言ってあげてください。小生が、外来で“お母さんががんばったからだよ”と言わないですむように。
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