かわむら こども クリニック NEWS  平成6年3月号


阪神大震災に寄せて

 先月起こった阪神大震災の被害は、日を追う毎に拡大し、戦後の災害としては、未曾有のものとなってしまいました。人命は言うに及ばず、建物、道路、鉄道などの被害の有様を見ていると、本当に地震の怖さを痛感させられました。為す術もなく、燃え上がる町、普段、なんとも感じていない、水の大切さを、今更ながら感じてしまいました。残ってしまったのは廃墟だけ、表に出てこない幾つもの悲劇を、飲み込んでいるのでしょう。遅ればせながら、犠牲になった方々の、ご冥福を御祈りいたします。
 マスコミを見ていると、政府の対応が遅れたとかの批判が目につきます。対応が遅れたとしても、この大きな震災で、一体誰が何をできたでしょうか。そんなことより、自然の中での人間の無力さ、自然の力の大きさを、もう一度改めて考えてみましょう。どんなに人間が知能があり科学力があっても、自然の前では無力ということを、認めてしまいましょう。そうしなければ、次の行動が出てこないかも知れません。
 されど人間です、今からでも出来ることはあるはずです。今回の地震のことで、感心させられたお母さんの言葉があります。お子さんは嘔吐下痢症で、2日にわたって点滴を受けなくてはならない状態でした。2日目ともなると、点滴を刺すときのこどもの泣き声が、苦痛になってくるのでしょう。そのお母さんは、点滴が終わった後に一言「神戸では、点滴も受けられないこどももいるのでしょうね」と言いました。そんなふとした言葉から、人としての優しさが伝わって、思わずその子に「いいお母さんをもってよかったな」と言ってやりたい気持でした。こんなことを例にあげたくはないのですが、病気の時、病院で治療が受けられる幸せ(もちろん病気になることが幸せというわけではないのですが)、こんな時にはそう感じてもいいのではないでしょうか?。病気になっても、病院で治療を受けられない、今までは遠い外国やテレビの中だけのことでした。それが今現実に、日本という国の中で起こりつつあるのです。医療に携わる僕らスタッフ一同、そして病気のこどもをもつお母さんたち、一緒になって何が出来るか考えてみましょう。
 災害は地震だけではありません。また何時自分たちが、被害を受けるかもわかりません。今回の地震を教訓として非常時の準備、対応、連絡方法などを、家族みんなで確認しておくことも大切でしょう。
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