かわむら こども クリニック NEWS  平成12年11月号


カルテ開示

 皆さんは、ディスクロージャーという言葉を知ってますか。もともとは企業活動の内容などを公開するという意味です。いわゆる情報公開という言葉が当てはまります。この情報公開は最近マスコミなどでよく取り上げられています。宮城県で食料費や出張費などで問題になり、皆さんも何度も耳にしたこともあるでしょう。
 最近医療の分野で、様々なトラブルが起きています。患者さんを間違えて手術をした、点滴から別なものを注入した、薬を間違えて投与したなど挙げれば、きりがありません。医療事故が起きた場合には、必ずしも原因がすぐ家族などに伝えられず、マスコミなどの情報では秘密裏に処理されているような印象を持たれるかもしれません。確かにマスコミをにぎわす事件では、我々から見ても納得できないような場合もままあります。もちろんこの中には意図的な部分もありますが、やむを得ないこともあるかもしれません。同じ医療従事者としての立場からは、複雑な気持ちです。ここでいつも問題になるのが、情報開示です。
 今までの慣習から医療の情報は、一般の人(患者〕には届きにくいものです。症状や所見によってどのような診断がなされ、何という薬が処方されているかも知らない人はたくさんいます。しかし最近では処方箋の内容が明らかになったりと、比較的開かれてきていることも確かです。内容を知らなくても多くの患者さんは、かかりつけを信頼して医療を受けているのです。実際患者さんの何%が信頼しているのかは、正直言って自分にもわかりません。患者さんの心の奥にある不満や不信が、どの程度なのかも判断することもなかなか難しいことです。前にも書きましたがインターネット医療相談の中には、他院で診療を受けている患者さんも疑問や不安を問い合わせてきています。
 この不透明な医療に関しては医師会でも問題視をして、カルテの開示を認めるようになりました。カルテ開示も重要ですが、その前に考えなければならないことは、カルテは誰のものかということです。カルテには名前、住所、年令や保険の種類など、事務的に必要なことがまず書かれています。他には既往歴や家族歴など、診断や治療に役立つような基礎的なことも記載されています。もちろん一般的なカルテの部分は、症状や経過、診察の所見、検査(種類と結果〕、および治療(点滴の内容や種類、内服薬の種る種類や量〕などがあります。この情報は患者さん自身の記録と考えることが、妥当なところでしょう。つまりカルテは患者さんのもので、医師が記載しクリニックで預かっていると考えています。となればカルテの開示ということは当然のことであり、患者さんに望まれれば断れないことなのです。しかし医師には患者の秘密を守る義務もあります。そのため求められれば、すべて開示といかないこともあります。たとえばガンの告知で、カルテを見ればガンであるということは一目瞭然です。その事実を伝えることが妥当なのかを判断することも、医師の役目の一つなのです。幸い小児科の外来では、あまり問題になることはないでしょう。
 当院でも患者さんから求められれば、いつでもカルテの開示をするつもりです。決して綺麗な字ではありませんが、カルテを見たいときは御遠慮なくどうぞ。しかし本当に大事なことはカルテ開示ではなくて、十分なコミュニケーションと信頼関係であることは言うまでもありません。この記事を参考にして、カルテとは、情報開示について、考えてもらえればと思っています。
クリニックNEWS コーナーに戻る