かわむらこどもクリニック

かわむら こども クリニック NEWS  平成16年 7月号


すこやかな心をつくる食生活 栄養士 鈴木玲子

現代日本が抱える食生活の大きな問題
 アメリカでは1977年に国が大規模な健康調査で脂肪が過剰でビタミン、ミネラルの欠乏した食事が心臓病や糖尿病の死亡率を上げているという結論を出し、その結果 国民の60%が牛肉、バター、卵、全乳など高脂肪食品を減らし、食物繊維の豊富な穀類野菜中心の食事内容に切り替えて、見事に心臓病などの死亡率が減少し続けているそうです。対して日本はどうでしょうか?戦後、体格を欧米並に高める事が国の栄養指導の方針の一つとなり、動物性の食品が奨励されました。それが日本人の食事を急激に変える原動力になったそうです。当時の肉信仰のようなものが未だに日本人の意識下にあるため、肉には栄養があると過剰に思い込まれているようです。結果 、現代病は増加の一途です。
食事が心や体に及ぼすもの
 現代の子ども達は、体格はいいが体力は昭和一桁世代の3割位しかないと言われています。骨折しやすく、反射神経・平衡感覚も鈍く、アレルギーが増え、風邪もひきやすいようです。もちろん、食事だけが原因ではありませんが、食事の影響は大きいと思われます。ファーストフード、スナック菓子、清涼飲料水などの摂り過ぎや主食・主菜・副菜が揃わない食事が習慣化して栄養の偏りが長期に渡れば、いくら幼くても生活習慣病の危険性は高くなります。砂糖は体の中で代謝する時にビタミンB1とカルシウムを、肉類も食べ過ぎるとカルシウムを消費します。加工食品は栄養素に乏しく、これを補うことができません。従って、そのような食生活では神経が疲れ集中力も無くなり、イライラして怒りっぽく、いわゆる切れやすい状態になるわけです。食事を正しくして成績を上げた中学校の例があります。ご飯給食の時に発芽玄米を何割か入れたところ、まず成績が上がってきて、荒れた子ども達が落ち着きを取り戻し、やる気が出てきたそうです。併せて、子ども達に栄養教育をしたところ、玄米を取り入れる家庭が増え、家庭でもすばらしい変化が起きたということです。
玄米食の効用
 栄養状態が心に及ぼす影響はとても大きいと思われます。栄養素というのは過剰に摂ると一方で欠乏する栄養素が出てくるという微妙なバランスで成り立っています。偏りなく食べるという事が何より大切です。簡単にバランスを考える方法として弁当箱でシミュレーションする方法があります。お弁当の半分にご飯を詰め、残りの半分の1/3が動物性と植物性のタンパク質、2/3が野菜・果 物にするというやり方です。茶色い穀物は(未精製の穀類・玄米、全粒粉など)タンパク質、ビタミン、ミネラル、繊維等が豊富なのでとても滋養になります。捨ててしまう部分にこそ貴重な栄養素が含まれているのです。もったいないですね。玄米が理想ですが、白米に雑穀を混ぜてもかなりの栄養が摂れますし、精白度を下げるという手段もあります。玄米は小豆や黒豆等を加えて圧力釜等で炊き、スリゴマをたっぷりかけて食べると本当に美味しく、私などは白米では歯ごたえや風味が無く物足りないと思うほどです。主食をこう変えると献立がとても簡単になってきます。例えば、野菜たっぷりのみそ汁と納豆と小魚少々に海草のサラダでも添えれば、必要な栄養素はほぼ完璧です。主食が白米だと微量 の栄養素が摂れない為、おかずの工夫が必要になります。
無理をせずのんびり一歩ずつ
 しかし、いくら体に良いことでも家族に無理強いしては楽しい食事にはなりません。ジュースの買い置きをやめ、砂糖の摂りすぎに気をつける。肉類を減らして豆類、魚貝類(特に頭から食べる小魚等)を増やす。野菜をたっぷり食べられるよう煮物などの料理を増やす。加工食品をなるべく減らす。脂っこい料理を減らす等、のんびり一歩ずつ、できることから始めましょう。そして主食(ごはん、麺等)、主菜(タンパク質のおかず)、副菜(野菜のおかず)が揃っているか確認し腹八分食べましょう。 お母さんは家庭の栄養士です。家族の健康を左右する重要な役目を担っています。赤ちゃんのいるお母さんも、仕事で忙しいお母さんも、どうぞ一つでも心に留めて実行してみてくださいね。

(第2回お母さんクラブの講演内容 提供:森永乳業)


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