かわむら こども クリニック NEWS 平成9年 7月号
赤ちゃんと脱水症
赤ちゃんは大人と較べ何倍もの水分が必要です。今回は赤ちゃんの脱水について考えてみましょう。
赤ちゃんの体重に対する水分の割合は、成人より多く70〜80%占めています。したがって体の水分を維持するために、多くの水分が必要になります。体重当りで150mlが必要で、5kgの赤ちゃんの場合は、約800ccにもなってしまいます。その量が多いことは成人を例にあげれば一目瞭然で、50kgの大人が、8lも飲めないこと考えれば明らかです。そのため摂取する水分が少ない場合や失われる水分多い場合には、容易に脱水症になってしまうのです。
脱水症の原因には様々なものがあります。下痢や嘔吐がその代表で、水分の入る量と出る量のバランスが問題となります。他にも発熱等によって哺乳量が少なくなることも原因となります。またこれから暑い季節になると汗や不感蒸泄(目に見えない蒸発によるもの)等によっても失われる量が増え、極端な高温の条件(真夏の車の中、風通しの悪い室内)では、脱水症の危険性が高まります。炎天下の車の中に放置することによる不幸な出来事は、毎年夏になると報道されます。もちろんこれは脱水だけでなくうつ熱(調節を越えた範囲の高熱)も原因となっているのです。
脱水症で最も大切なのが、予防です。下痢をしている場合は飲ませると下痢が出るからと言って、飲ませないお母さんがいます。しかし基本的にはこれは間違いなのです。水様便の場合は飲ませなくとも、腸に水分が滲み出てきています。その滲み出た分を補うことが大切で、失われる以上に与えることが必要です。嘔吐の場合は少し違ってきます。脱水症を必要以上に心配するあまり無理に与え続けると、かえって嘔吐が止まらなくなることがあります。そのときには少なめの水分をこまめに与えることが必要になってきます。風邪による発熱や食欲がない場合には、無理やり食べさせず水分の補給を心掛けて下さい。補給する水分としてはイオン飲料が考えられますが、大人用では子どもには合いません。子供用のイオン飲料かもしくは、病院で処方するものが最適です。イオン飲料にこだわり過ぎる必要はなく、水分と単純に考えてお茶や湯冷し等でも構いません。
もう一つ大事なことは環境です。熱があって具合が悪い時には、過ごしやすい環境をつくってあげて下さい。熱ければ涼しくが基本です。よくクーラーなどの使用について質問されます。せっかくの文明の利器ですから、子どもの状態に合わせて上手に使ってあげて下さい。大人に合わせず、冷え過ぎないようにを心掛けて下さい。熱い時期の車の中や部屋の中に、短時間といっても放置することなどはもってのほかです。
治療は軽症の場合は口からの補給になりますが、元気がない、不機嫌、尿量が少ない場合には点滴による治療が必要となります。
赤ちゃんは水分に対する余裕が少ないことを考えて、症状などで思い当たる場合は早めの受診が必要です。大人の不注意による脱水は油断から来るものです。この時期は赤ちゃんを取り巻く環境に十分注意を払ってください。
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