かわむら こども クリニック NEWS  平成15年 4月号


病気の時の過ごしやすさ

 病気の時には、どんなことに注意すればよいのでしょうか。病気の時に大切なのは、過ごしやすさです。今回は、この過ごしやすさについて考えてみましょう。
 まずは具体的な例を挙げます。「熱がある時は、冷やしましょう」、「病気の時には栄養の補給が大切です」、「カゼをひいたらお風呂は避けましょう」ということを聞きますが、本当でしょうか。これらは全て正しくもあり、間違いでもあるのです。病気の対処法には、様々方法があります。それを一つ一つ考えるより、基本的な考え方に注意を向けることが大切なことなのです。基本的な方向さえ間違いが無ければ、あまり悩まないで済むかもしれません。
 「熱がある時は、冷やしましょう」といっても、逃げ回る子どもに対してはどうしたら良いでしょうか。子どもはおとなしく寝ていてくれません。「病気の時には栄養の補給が大事です」といっても、食欲の無い子は食べてくれません。押さえつけて無理矢理食べさせる必要が、あるのでしょうか。「カゼをひいたらお風呂は避けましょう」は、どうでしょう。鼻水や咳があったり、体温が高めだからと言って、入らなければ1〜2週間も入れないこともあります。必要なことなのに出来なければ、子どもにとってのストレスだけでなく、親御さんにとってもストレスとなります。このストレスが、病気によい影響を与えるはずはありません。
 そこで出てくるのが過ごしやすさです。親御さんが病気の時に一番有り難いことは何ですか。周りの人たちから、過ごしやすい環境を提供してもらうことではありませんか。具合が悪く食欲が無いときの最も嬉しい言葉は、誰かの「なんか食べたいものがあれば、好きなものを買ってきてあげる」ではないでしょうか。子どもでも同じことです。親御さんは心配のあまり、一回のことで判断をしてしまう傾向があります。カゼで食欲が無くて食べられないことは誰でも経験することです。食べられないからといって、必ずしもカゼが重くなるというものではないはずです。そんな経験があるにもかかわらず、子どもが一回でも食べないと心配してしまうのが親なのです。自分が食欲が無い時どんぶり飯を出されて、スタミナをつけなさいと言われればきっと腹を立てるのに。子どもが病気の時の親御さんの役割は、様々です。しかしその根本にあるのは、病気の子どもの過ごしやすさです。冷やすことが、無理矢理栄養を補給することが、風呂に入らないことが、過ごしやすいとは限りません。冷やさないこと、無理矢理補給しないこと、お風呂に入ることの方が、子どもによっては過ごしやすさなのかもしれません。同じような話はたくさんあります。夏になると決まって聞かれるのが、クーラー(エアコン)を使っていいかです。熱が高くてフーフー言っているのに、クーラーなしではうつ熱(熱が身体に溜まってしまうこと)になるかもしれません。同じように高熱の時には厚着をさせ、布団をいっぱい掛けて汗を出してあげるということも言われます。もちろん昔ほどではありませんが。はたしてこれって、過ごしやすさなのでしょうか。極端な言い方をすれば、常識から反したことやいやがることを強制するということは虐待と言われてもしかたありません。
 子どもの病気の対応については、育児書、医学書、昔からの言い伝えなど本当にたくさんあります。実際どれを信じたら良いのかと迷うこともよくあります。しかし基本は、過ごしやすさです。自分が病気の時どうしてもらえば、嬉しいのか考えてみて下さい。子どもにとっての過ごしやすさとは何か、それが一つの答えなのです。
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