かわむら こども クリニック NEWS 平成9年 3月号
チャイルドシートを考える
今回は、マスコミで時々話題になるチャイルドシートについて考えてみましょう。お母さんたちの中で、子供を自動車に乗せるときチャイルドシートを使っている人はどのくらいいるのでしょうか?
若い時僕もそうだったように、何の根拠もないのに大丈夫と思っているのではないでしょうか?事故を起こさなければ大丈夫なのは当たり前です。起こしてはじめてわかることですが、起こしてからでは遅すぎるのです。これは何も交通事故に限ったものではありません。子供の事故全体に渡って言えることなのです。
最近の自動車はクラッシャブルゾーンが確保(室内がつぶれない:何とかボディーとコマーシャルで流れています)されたり、エアバッグが装着されたり、シートベルトと安全性は向上されてきています。もちろんエアバッグが装着されていれば、シートベルトが無くても安全などと思ってはいないでしょう。エアバッグでさえシートベルトの補助的な役割でしかないのです。それはすべて、大人のための安全装置なのです。身長が低ければシートベルトとエアバッグさえ役に立たないと言われています。
子供の場合は、大人と違った安全対策がなされるべきで、その一つがチャイルドシートというわけです。子供が事故によりフロントガラスやダッシュボードに激突することが大きな問題です。後席にいれば、大丈夫というものではありません。実際衝突の際にはどのくらいの力がかかるのでしょうか?お母さんたちが子供を捕まえているだけで大丈夫なのでしょうか?確かに、最近の女の人は強くなり、主婦はもっと強いに違いありません(ごめんなさい)。でもそれで支えることが出来るのでしょうか?10Kgの子供を抱いて時速50Kmで衝突した場合、その腕には何と300Kgの力がかかると言われています。火事場の何とか力という言葉がありますが、300Kgを支えることは不可能です。そんな危険を承知で、助手席で子供を抱いていたり、最近はやりの広い後席で遊ばせたりするはずはありません。しかし起こるまでわからいのが、事故なのです。
日本での場合のチャイルドシートの装着率はどのくらいなのでしょうか?1994年のデータでは、全体で何とわずかに7.7%です(JAF調べ)。つまり10人に1人も装着していないことになります。これを読んでいるお母さんたちではいかがでしょうか?特に乳幼児の場合は、乗車中の事故が問題です。外国を例にあげると法律で義務づけているところがたくさんあります。産院からの退院の時にも義務づけられている国があるほどです。ちなみにアメリカでの装着率は83%で、全部の州で義務とされています。
日本での装着率の低さの原因は一体なぜなのでしょうか?一つはチャイルドシートの値段の違いです。日本ででの価格は20000〜50000円と高価なのに対し、アメリカでは7000〜20000円程度になっています。これはどこの問題があるのでしょうか?メーカーの利益、規制(国内とアメリカの差)も関係しているかも知れません。もし規制があるとすれば、これこそ規制緩和の対象にすべきだと思います(これは事実かどうかわかりません)。もう一つは行政の対応でしょう、義務化しているのは先進国です。先進国を自負していながら義務化できない理由は?となると、いろいろ疑いたくなってしまいます。しかし最も大きな理由は、保護者の意識としか言いようがありません。やはり根拠も無く“うちに限って大丈夫”と思っていることが大きな原因と思います。
確かに値段は高いものかも知れません。比較とするものは何よりも価値がある子供の命です。この際思いきって、購入を考えてみてはいかがでしょうか?
出来れば、チャイルドシートの再利用も考えてみて下さい。大きくなれば使わなくなるものです。もちろん次の子供には役に立ちます。使わなくなったら、他の人に譲ってはいかがでしょうか?当院を窓口にしても結構です。出来ればこういう活動も行っていきたいと思います。御協力おねがいします。
クリニック NEWS コーナーに戻る