かわむら こども クリニック NEWS  平成9年 1月号


こども病院を宮城にも

 今回は「こども病院」について話してみます。河北新報の1月8日号夕刊の第1面に載ったので、御存知の方も多いと思います。
 全国各地に20施設以上の小児病院(こども専門の病院)がありますが、東北には一つもありません。小生は、国立小児病院で勉強し、その後新生児を専門にしてきました。国立小児病院は、日本で初めての「子ども病院」で昭和40年にできました。総合病院と同じで、産科と老人を扱う科以外は、すべてそろっていて診療科目は10以上あります。小児病院で勉強できたことが現在につながっているため、「こども病院」には人一倍関心があります。
 小児科を専攻している私たちが、声を大きくしてもなかなか子供の特殊性を認めてくれません。たとえば病院でのことを考えてみましょう。レントゲンや検査の器械はもともと大人専用に作られています。検査の台に昇ることや検査のための採血量を何とか工夫して使っているのです。トイレにしても同じで、子供のためのトイレを用意しているところはあまりありません。健康なら我慢すればいいのですが、病気の子どもたちです。また総合病院の中での小児科の立場は決してよいものではありません。出生率が低下し、子どもの数が減少し入院患者の数が減ってきているのです。東京などでは小児病棟が閉鎖された話が聞こえてきます。仙台では閉鎖した話は聞きませんが、小児病棟が空くと大人が入院することもあるようです。動けない子どもばかり入院しているわけではありません。安定期に入れば子どもは遊び回るのです。大人と一緒では、自由に遊ぶこともできません。でも遊ぶ場所が無い病院もあるのです。プレイルームといって子どものための部屋を用意してある病院もあります。入院が長期になれば、学業の問題や精神的な問題も生じてきます。ケアするための人(保母等)が必要となってくるのです。そこまで考えると、やはり子ども専門の病院が必要となるのは当たり前のことです。
 宮城県における「こども病院」は、県小児科医会が平成4年に設立の提言を行いました。その後県母子総合医療センター設立推進協議会が中心となって進めています。県の予算に調査費が計上されましたが、具体的な構想はまだのようです。その大きな理由は、経済的な問題です。「こども病院」は試算によると赤字経営となることです。もちろん設備や人件費を考えれば仕方のないことです。
 最近は福祉という言葉を見ない日がありません(良い意味でも悪い意味でも)。人口の老齢化のため、福祉という言葉自体がお年寄りの方を向いています。西暦2050年には、3人に1人が65歳以上となるという報告が出されました。今の私たちの問題ではなく、今の子どもたちやこれから生まれてくる子どもたちの問題なのです。出生数が低下しお年寄りが増えれば、子どもたちの負担がだんだん重くなるのです。そんな子どもたちのために、今のうちに「こども病院」を造ってあげることも福祉の一つです。県や厚生省で問題となったことを考えれば、お金のやり繰りは何とかなるのかも知れません。
 窓口で署名運動を行っているのを御存知ですか?「こども病院」の設立はわれわれ医師だけでなく、お母さんたちの協力も必要です。ぜひ署名運動に御協力をお願いいたします。署名だけでなく、何かの折り「こども病院を、宮城にも」と声を上げて下さい。

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